非フランチャイズ型学習塾を開業するポイント

学習塾を経営する場合には、「個人経営かそれともフランチャイズか」という選択肢がありますが、今回は個人経営の非フランチャイズ型学習塾の開業がテーマです。

学習塾を開業したいと考えているものの、どのような準備が必要かわからない人に向けて、開業までの準備や流れなどを解説します。

開業に向けて必要な手続きや成功のポイントにも触れるので、ぜひ参考にしてください。

①学習塾経営のための資格は必要ない

学習塾経営に資格は必要ありません。税務署に個人事業の開業届を提出して申請が認められれば、誰でも学習塾の経営者になれます。教室を運営するための設備投資や講師の人件費はかかりますが、商品を売るわけではないので、在庫を抱えるリスクはありません。

比較的リスクが少ないビジネスのようにも思えますが、学習塾経営を軌道にのせるためには、生徒にどのような教育を受けさせたいかという教育ビジョンが必要です。

教育ビジョンとは、「受験のための進学教室」「授業の遅れを取り戻す補助教室」など、学習塾の方向性のことです。教育ビジョンがないと、保護者が自分の子どもをその塾に通わせる必然性を説明できないということです。

②学習塾の分類

1.集団指導型

進学塾に多いのが集団で一斉に指導を受ける集団指導型です。

受験合格を目標にしているためライバル関係が生まれやすく、切磋琢磨しながら学習するのに適したスタイルです。

2.少人数指導型

グループ指導型のスタイルで、参加者の習熟のレベル平均的にをあげていくのが目的です。

3.個別指導型

集団指導型では難しい手厚いサポートが目的です。高度な受験勉強のほか、大勢のなかでは緊張する、学習に身が入らないという生徒に対応できることもメリットです。

4.リモート学習型

映像を見ながら学習を進めるタイプの塾が増加中です。

教育レベルを保ったまま、人件費を削減できます。生徒が自宅で学習する形式であれば、教室などの設備費を抑えることができます。

③開業資金

1.一般的な開業資金

塾の規模によっても異なりますが、ひとつの目安として開業のための初期費用は500万円程度を準備しましょう。

項目としては、物件取得費、教材費、内装工事費、設備費、広告宣伝費などです。

そのほかに、運営資金としては人件費、教室の家賃、水道光熱費などがあります。

開業後1年程度の運営費を、予備費として確保しておきましょう。

2.公的融資および助成金について

自己資金に自信がない場合は公的融資や助成金制度を活用することも検討してください。日本政策金融公庫の新創業融資制度は、事業の実績を問わず、担保や保証金もなしで融資を受けられます。

自己資金の額しだいですが、低金利で最大3000万円もの融資を受けられます。

地域雇用開発助成金厚生労働省から受けられる助成金で、地域の活性化に役立つとされる事業に対して提供されます。

そのほかにも、各自治体がおこなっている融資制度などがあります。いずれの制度も、ご自分で申請することも可能ですが、司法書士行政書士など融資の専門家に依頼することで、スムーズに手続きができます。

④学習塾経営の難しさ

近年、学習塾の経営は難しくなっています。

1.少子化の影響

少子化によってターゲットとなる子どもが減っているので、市場全体がジリ貧の状態です。

2.個別指導塾のニーズの高まり

個別指導塾のニーズが高まっていることによって、集団指導塾は経営が厳しくなったといわれています。集団指導塾の領域においては、とくに個人学習塾の生き残りが難しくなっています。

3.業界内の競争激化

ターゲットとなる生徒が減っているのに対して、学習塾業界に進出する企業や個人は増加傾向です。ほかの塾との差別化を図るためには、何かしらの強みを持つ必要があります。

4.気になる学習塾オーナーの年収は

一般的に非フランチャイズ型学習塾のオーナーの年収は500万円程度といわれています。多くの生徒を預かる責任のある立場であることを考えると、収入としては少し物足らないようにも思います。

⑤学習塾開業の流れ

1.塾のビジョンを決める

最初に学習塾のターゲットや教育ビジョンを決めましょう。

教育ビジョンが決まらないと、開業場所の選定や講師の確保がすすみません。学習塾を新規開業する場合は個別指導塾をおススメします。

世の中のニーズは個別指導型に傾いており、生徒一人あたりの単価を高く設定しても、特色ある塾であれば集約が見込めるためです。

2.開業後の収支を考える

塾の経営を安定して続けるためには、事前に開業後の収支をシミュレーションする必要があります。進学塾を目指すなら、実績がある講師を集めなければいけないので人件費がかさみます。補習塾であれば、大学生のアルバイトでも務まるので人件費を抑えられるでしょう。

このように、塾の教育ビジョンに基づき、収支バランスを取れるように計画を立ててください。

3.教室の物件を選定する

教室の場所は、利便性と環境をチェックして選びましょう。

自宅で開業する人もいますが、教室を借りる場合は駅や学校の近くなど、生徒が通いやすい場所がいいでしょう。公共交通機関がないエリアの場合は、保護者の車送迎を想定し、近くに駐車場がある場所での開業がおススメです。

生徒と保護者が安心できるように、治安面も重視して開業場所を選んでください。

4.機材の準備

看板の設置や外装工事、ホワイトボードや机、イスを手配しましょう。教室の什器は中古品でも構いません。

5.人材確保

求人サイト、人材紹介サービス、ハローワークなどを使って講師を確保します。開業初期は、自分が講師やスタッフとして働くケースも多いです。

6.生徒募集

塾の存在をアピールしないと生徒の集客はできません。

塾の特徴や強みを説明するチラシの配布や地元のフリーペーパー、Webサイトの作成、SNSでの呼びかけ、夏期講習など季節に応じたイベントの企画などを通じて宣伝募集しましょう。

⑥強い学習塾に育てるためには

1.強い学習塾に育てるために必要なビジョン

大手塾のような画一的な指導法ではなく、生徒それぞれにあわせたきめ細かい指導ができる独自の教育ビジョンを構築することができれば、個人指導などをメインとした小さな塾であっても充分に戦えます。

2.柔軟なスケジュール構築

小さな塾は、スケジュールを組みやすいというメリットがあります。

集団授業を行っている大手塾では、教室ごとに人数のばらつきが生じるなどの非効率が発生しますが、個人指導であれば生徒に合わせた教室の運営が可能です。

3.大切なのはコスト管理

塾を経営するためには特別な資格は必要ありませんが、オーナーには単に講師としてではなく、経営者としての意識が求められます。

良質な経営を維持するためには、厳しいコスト管理が必要です。学習塾の運営がスタートすれば、オーナーは日々、費用細目とにらめっこすることになるでしょう。

しかし、あらゆる経費の見直しを迫られる場面であっても、人件費の削減だけは教育の質を落とすことになるのでおススメできません。

⑦会社設立・起業を考えている方へ

会社を設立するうえで欠かせないのが「登記手続き」と「創業資金の準備」です。

会社登記は会社設立をする際に必須の手続きです。

自分で手続きをすることもできますが、かなりの手間や時間がかかります。

また、融資を受けて創業をする場合には、金融機関に提出するためのさまざまな資料を準備しなければなりません。

また、さまざまな助成金補助金制度についても、個人で申請をおこなうのはなかなか骨が折れるものです。

こんなときには専門家に手続きを依頼しましょう。

登記手続きや創業融資、助成金補助金の申し込みに費やす時間や労力は、ぜひこれからのビジネスの本業をスタートするために使っていただきたいのです。

⑧創業融資を受けるためには専門家を利用しよう

日本政策金融公庫で創業融資を利用する際には、行政書士のサポートを受けることをオススメします。

創業融資を受けるためには、創業計画書や事業計画書などを作成し、創業するビジネスがどのように成功していくかについて根拠をもって説明する必要があります。

創業計画書や事業計画書をどれだけしっかりと作成し、きちんと説明できるかという点が非常に重要です。

もちろん、ご自身で創業計画書・事業計画書を作成し、日本政策金融公庫の面談を受けることも可能ですが、融資成功の確率をしっかりと高め、融資を実行させるためには、融資の専門家に依頼することが一番です。