行方不明の相続人がいる場合のやっかいな相続手続き

遺産分割は相続人全員で行わなければならず、相続人一人でも欠けた遺産分割協議は無効になってしまいます。しかし、遺産分割協議をしようと思った際に全ての相続人と連絡がとれる状態にあるとは限りません。たとえば兄弟相続のケースや、代襲相続や数次相続が重なると、相続人の関係が疎遠になり、連絡が取りにくくなります。音信不通で所在がわからなくなってしまった相続人がいるケースもあります。

そこで今回は、音信不通で連絡が取れない行方不明の相続人がいる場合の相続手続きの方法を解説します。

①連絡がとれない相続人の種類

連絡が取れない相続人は、大きくわけて2種類あります。

1.単に連絡先がわからない場合

疎遠にしていたため、相続人の連絡先がわからないケースが考えられます。この場合は、身近な親族に聞いて、連絡先を知らないか確認するところからはじめます。もしかしたら親戚の誰かが、その人の連絡先を知っている可能性があります。

行方不明者がSNSを利用していて、インターネットで探したところ、見つかったというケースもあるそうです。

2.生死不明の場合

行方不明で音信不通、生死すら不明の場合については、戸籍をたどることで発見に至る可能性があります。さらに、その方法で発見できない場合は、不在者財産管理人の選任を検討することになります。

1)戸籍の附票で住所を調べる

電話番号や現在の住所がわからなくても「戸籍の附票」によって現在の相続人の住所を調べることができます。戸籍の附票は、本籍地の役所で戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、その本籍地にいる間の最初から最後までの住所変更の履歴が記載されています。

これにより行方不明者の最終の住所地を調べることができます。請求は相続人の本籍地の地区町村役場に申請しますが、郵送での請求も可能です。

2)傍系の親族関係の場合

戸籍の附票を請求できるのは一部の範囲内の親族に限られています。当該の行方不明の相続人との関係が「直系(親子や祖父孫など)」であれば、自らの地位で戸籍謄本を請求できますが、「傍系(兄弟や叔父甥など)」の親族の場合は、相続関係を証明したうえで請求しなければならないので、手間がかかります。

弁護士、司法書士行政書士などの国家資格者は職務上請求(国家資格者による職権請求)を使って附票を取得することが可能です。そもそも連絡が取れない相続関係は、傍系のケースが多いと思われるので、はじめから専門家に依頼をして、戸籍謄本や住民票除票、戸籍の附票を職権で取得してもらうのが賢明でしょう。

3)不在者財産管理人の申し立て

戸籍の附票によって現住所が判明した場合でも、実際に生死不明の相続人が届出の住所に住んでいない可能性は十分あり得ます。最終の現住所が判明している場合は手紙を送って確認してみましょう。あるいは、その住所に直接訪問してみる方法もあります。応答があったり、所在確認ができれば、その先は遺産分割の話を進めていくことができます。

その住所に全く住んでいる気配がないようであれば、法的な手続きに進みます。それが「不在者財産管理人」の選任です。

②不在者財産管理人の選任と失踪宣告について

1.不在者財産管理人選任手続きと遺産分割協議

相続人が行方不明の場合、相続人は家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任申立てを行います。不在者財産管理人となる人は、家庭裁判所によって選任された人(弁護士、司法書士などの士業)、もしくはそれ以外の人です。親族でも構いませんが、遺産分割協議の際に、利益相反関係となる親族は不適とされるので注意してください。そのほか、手続きをする際に30~100万円の予納金を求められることがあります。

家庭裁判所へ選任の申立てを行ったあと、家庭裁判所は不在者であるかどうかの審理を行います。審理には数か月ほどを要し、不在者財産管理人の選任まで、半年ほどの時間がかかるのが通常です。遺産分割協議を急いで行う必要がある場合には、速やかに申立て行うことが重要です。遺産分割協議は、不在者財産管理人を含めて、相続人全員で行います。

2.失踪宣告の申し立て

行方不明の相続人については、行方不明となってから7年以上経っている場合は、不在者財産管理人ではなく、「失踪宣告の申立て」が可能です。失踪宣告が認められると、行方不明者は死亡扱いとなるので、その人抜きで相続手続を進めることができます。

3.不在者の権利

不在者は現在行方不明であっても、相続の権利は有しています。したがって、不在者の財産を奪うような遺産分割協議の内容は認められていません。具体的には、不在者が法定相続分以上の財産を取得するような内容にしなければなりません。

③相続人に不在者がいる遺産相続の注意点

1.不在者財産管理人の処遇について

不在者財産管理人は、本来あくまでも暫定的な立場であり、相続手続きを進めるために選任されています。不在者財産管理人は、不在者が現れるか死亡(失踪宣告も含む)するまで、財産の管理を続けなければいけません。その間、管理費用も発生し続けます。

したがって、当該の相続人が、生死不明状態が続いているのであれば、失踪宣告を申請することになりますが、失踪宣告認定のハードルは高いことについては知っておきましょう。

2.相続税の申告に間に合わない

相続税の申告は、相続開始の翌日または相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。相続税の申告と納付は、相続人それぞれが相続した分に応じて行います。

納税期限を過ぎると延滞税が課せられます。ところが、遺産分割協議が終わっていなければ、誰がどの相続分に対して納税すべきかが決まりません。

この場合には、相続人各自が法律相続分に合わせて期限内に申告、納税します。その後、行方不明の相続人の処遇が決まって遺産分割が完了した段階で、改めて修正申告を行う必要があり、手続きが二度手間になってしまいます。

④不動産を放置しておくと

一定額の遺産以内であれば相続税は発生しないので、煩雑な相続義務を放置しているケースもありますが、好ましくありません。

遺産に不動産が含まれていればl、当該の不動産に関する責任は相続人全員にあります。たとえば固定資産税は、相続人全員が支払う義務を負っています。法改正により、不動産相続に伴う登記も義務化されています。また、家屋を管理せずに放置しておくと、万が一建物が倒壊したり火事になって他人に損害を与える可能性も考えられます。第三者に損害を与えた場合、相続人全員が責任を追うこととなります。

とくに遺産に不動産がある場合は、不在者財産管理人を早急に選任し、早期に遺産分割協議を進めることを検討しましょう。

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