高齢者介護デイサービス事業の可能性について解説

日本には現在、特別養護老人ホームへの入所を希望しても満員で入れず自宅で待機している人が約40万人いるといわれています。
また、家族が介護する意志や能力がないために、治療する必要がないにも関わらず病院や老人保健施設を転々としている「社会的入院」の状態にある高齢者は約13万人いるともいわれています。
昨今社会問題化している老人介護ですが、逆にいうとビジネスのビッグチャンスであるともいえます。
そこで今回は高齢者介護ビジネスの基本と、新規参入にあたってもっとも障壁の低いデイサービス事業の始め方についても解説します。

①高齢者介護は成長産業である
日本の高齢化社会において、マーケットは拡大する一方です。
しかも、ただボリュームが大きいというだけでなく、要介護者たちが購買力を持っているということが、高齢者介護事業が注目すべきビジネスである理由です。
言葉は悪いですが「年寄りはカネになる」ということです。

②高齢者介護事業のために必要な資格

あらたに介護施設を開業する場合に必要とされる資格があります。
このなかには、事業を行うために必ず必要な資格と、あると便利な資格があります。
1.サービス提供責任者
介護事業を開業する際には、必ずサービス提供責任者がいなければなりません。
サービス提供責任者になるためには条件があります。
介護福祉士・看護師・准看護師保健師・実務者研修・ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修の有資格者は届出をすればサービス提供責任者になれますが、介護職員初任者研修(旧・ホームへルパー2級)の場合は実務経験3年以上が条件です。
開業にあたっては、有資格者を1人だけ確保するだけでは不安です。
何かの事情でサービス提供責任者が退職してしまうと事業を続行できなくなるので、余裕をもってサービス提供責任者を複数名確保しておくことが重要です。
2.事業を発展させるために有利な資格者
開業後、事業を発展させるために、さまざまな有資格者を職場に取り入れることで幅広いサービスを提供することができます。
たとえば、社会福祉士精神保健福祉士がいると生活相談員として活動してもらうことができます。生活相談員とは、利用者やその家族、事業所などの連絡・調整役を担う仕事で、事業の潤滑剤としての役割が期待できます。
そのほか管理栄養士や調理師がいれば、調理職員として働いてもらうことによって利用者の健康面を食事から支えることができます。提供する料理の質の向上や食材の費用を節約できるメリットも期待できるでしょう。
看護師が施設内に常駐していると介護を必要とする人や家族は大きな安心感をもって利用することができるでしょう。理学療法士柔道整復師など身体の機能を把握している有資格者がいれば、介護者のリハビリを本格的に行うことができます。

③介護サービス事業で認められる法人形態の種類

介護サービスを始めるときに、法人形態を決める必要があります。
指定介護サービスで使用できる法人形態は、株式会社、合同会社合資会社・合名会社、NPO法人、医療法人、社会福祉法人、社団法人・財団法人、協同組合ですが、多くは株式会社かNPO法人かの選択になると思います。
株式会社を選択するケースが多いですが、地域密着型の介護サービスではNPO法人非営利団体も多く存在します。
NPO法人は開業費用も抑えられるので、小規模で介護サービスを提供していく上ではメリットが大きいです。介護サービスのイメージにも合っているので、株式会社に比べて社会的印象を良く見せることができます。ただし、NPO法人は利益を出すことを前提にしていない組織であることを最初に確認しておきましょう。
後々事業を大きくするために資金を集められる土台を築いておきたい場合は株式会社を選択した方が良いでしょう。

③介護事業開業のハードルが低いのはデイサービス
介護保険制度がスタートし、高齢者の在宅化を進める3本柱といわれているのが「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」です。
このうち、ショートステイは設置基準を満たす施設の実現が容易でないことや、訪問介護は自宅に人を招き入れることが家族に抵抗感がある点がネックだという指摘がされています。
そこで、比較的参入障壁が低いデイサービスが注目されています。

④デイサービス成功のポイントは3つある

1.営業時間
できるだけ長時間利用できるデイサービスに人気が集まっています。この場合、スタッフのシフトを手厚くすることで長時間サービスを維持していきます。
2.料金設定
地域性や要介護度にもよりますが、デイサービスの基本料金(自己負担分)は1000~2000円程度であると考えられます。このほかに食費などがかかります。所得が限られる社会的弱者の方でも利用可能な設定にしておくことがポイントです。低所得者向けの軽減制度について、利用者が気軽に相談できる体制をとっておくことも重要です。

⑤デイサービス開業の秘訣
1.開業する地域
できれば土地勘のある場所で、人口、高齢化率、福祉施設の数、入所待機者の数などの統計数字を基に調査をすすめましょう。近隣の競合施設の状況チェックも重要です。
2.開業する拠点
デイサービスの拠点としてすすんでいるのが、古くなった戸建て住宅の活用です。
初期投資を抑えられることもありますが、好まれる一番の理由は、戸建て住居がこれまで高齢者が過ごしてきた生活環境に近いということです。戸建て住居は利用者にとってあたかも自分の生家やご近所の友達と一緒に暮らしているように感じて取ってもらえるでしょう。
3.融資や行政の補助の状況のチェック
開業にあたっては、融資を受ける場合が多いと思います。地元の金融機関の状況なども確認しておきます。
市場調査や事業の採算性、将来予測などを丹念に調査して事業計画書を作成しましょう。日本政策金融公庫や地域の金融機関から融資を受けるためには、しっかりした事業計画書が求められます。また、自治体の開業補助制度を有効に利用しましょう。
4.利用者募集
地域の居宅介護支援事業所のケアマネージャーや病院のソーシャルワーカー社会福祉士、介護支援専門員など)を直接訪問し、地域の広告ツールを利用しましょう。
5.スタッフ探し
開業のための最大の難関がスタッフ探しでしょう。
慌てて質の悪いスタッフを入れてしまうと、後々問題が発生することが多くあります。良質なスタッフをどれだけ集めることができるかが、ビジネスが成功するかどうかのポイントになります。
介護職の現状を見ると、給与水準やキャリアステップなどで課題があるのは事実です。その一方で、資格があるのに活動していない休眠人材が多くいるという現実があります。
収入面、労働条件面ともに労働条件をよくすることによって、ほかの施設で実働しているスタッフの転職や、休眠人材の発掘を考えましょう。
また、事業を長期的に継続するためにも、すでにキャリアがある人だけでなく、専門学校や福祉系大学へ積極的にアプローチしてみるといいと思います。

NPOや会社設立・起業を考えている方へ
NPOや会社を設立するうえで欠かせないのが「登記手続き」と「創業資金や運転資金の準備」です。
会社登記は会社設立をする際に必須の手続きです。
自分で手続きをすることもできますが、かなりの手間や時間がかかります。
また、融資を受けて創業をする場合には、金融機関に提出するためのさまざまな資料を準備しなければなりません。
また、さまざまな助成金補助金制度についても、個人で申請をおこなうのはなかなか骨が折れるものです。
こんなときには専門家に手続きを依頼しましょう。
登記手続きや創業融資、助成金補助金の申し込みに費やす時間や労力は、ぜひこれからのビジネスの本業をスタートするために使っていただきたいのです。

⑦創業融資を受けるためには専門家を利用しよう

日本政策金融公庫で創業融資を利用する際には、行政書士のサポートを受けることをオススメします。
創業融資を受けるためには、創業計画書や事業計画書などを作成し、創業するビジネスがどのように成功していくかについて根拠をもって説明する必要があります。
創業計画書や事業計画書をどれだけしっかりと作成し、きちんと説明できるかという点が非常に重要です。
もちろん、ご自身で創業計画書・事業計画書を作成し、日本政策金融公庫の面談を受けることも可能ですが、融資成功の確率をしっかりと高め、融資を実行させるためには、融資の専門家に依頼するのが一番です。