不動産会社はなぜ相続があったことを知っているのか

相続登記を申請した直後に、不動産業者から営業電話やダイレクトメール、手紙が届くことがあります。親族が亡くなって、それほど日が経っていないにも関わらず、あまりにもタイミングが良すぎて気持ちのいいものではないと思います。

相続税の申告および納税の期限は10か月以内になっているため、相続した不動産をどうするか、ゆっくり検討する時間は足りません。そんなときに、見知らぬ不動産業者や税理士事務所から営業電話がかかって来たり、タイミングよくDMが届くのです。

今回は、不動産会社がなぜ相続があったことを知っているのかについて解説します。

①個人情報が漏洩しているのか

不動産を相続した直後に、不動産業者などから連絡があると、「ひょっとして自分の個人情報がどこからか流出しているのではないか?」と疑問をもつのは当然のことです。

1.相続登記の仕組み

不動産を所有する人が亡くなると、法務局で相続登記の申請をして相続人に名義を変更します。変更登記が受理されると、登記簿にその不動産をあらたに取得した相続人の「住所」と「氏名」が記載されることになります。氏名や住所が記載されることに抵抗を感じるかもしれませんが、登記手続き上、省略することはできません。

2.登記簿に記録される内容

少し専門的になりますが、登記簿に記録される内容を説明します。登記簿は、①表題部、②甲区、③乙区、④共同担保目録の4つの項目に分かれています。不動産の所有者は「甲区」に記載されます。

相続登記が完了した後の登記簿の「甲区」には、たとえばこのような記載がされています。

Aさんが平成10年■月■日にこの不動産を取得し、令和2年▲月▲日にAさんが死亡。そして、令和3年▽月▽日に相続登記を申請し、Bさんが現在の所有者として登記されています。そしてBさんの自宅住所が「東京都Ⅽ区D町三丁目2番1号」であることについても、登記簿から把握することが可能です。

3.登記簿は誰でも取得可能

登記簿は、法務局に申し出るだけで誰でも取得することができます。「誰でも」というのは、その不動産に無関係な人でも、申請すれば取得できるということです。たとえば外国人であっても取得は認められています。現在は、直接法務局に出向くまでもなく、オンライン申請することも可能です。不動産業者は、これらの登記簿の情報をもとに営業をかけてくるわけです。

②不動産業者の営業方法

相続登記をしたことによって、不動産の所有者(住所と氏名)が公になります。とくに相続によって所有者が代わったタイミングというのは、不動産を売却する機会としてもっとも適したタイミングなので、不動産業者にとってもアプローチする絶好のタイミングといえるわけです。

1.電話やDM、手紙

不動産業者が送ってくるDMや郵送の典型例を紹介しましょう。

「売却物件求む!」

「その土地高く買います」

「家を高く売りませんか?」

「無料査定承ります。」
「○○(相続した土地の場所)の不動産を探しているお客様がいます」

このような内容のDMが典型例なものです。注意しておきたいのは、「Ⅹ町一丁目の土地を探しているお客様がいます!」といった、実際には引き合いの実態のない嘘で問合せを誘うケースです。本当にそのような顧客がいればいいのですが、エリア名の部分だけ変更したテンプレートのDMを大量に送り付けるケースがほとんどです。

2.訪問セールス

DMや電話であれば無視すればいいだけですが、自宅まで押しかけてきて「査定させてください」「いまこのエリアで買いたい人がいます」といったセールストークで、営業をかけてくる場合があります。実際に引き合いがなくても、とりあえず媒介契約だけを取ことを目的にした悪質な業者もいます。注意しましょう。

3.不動産業者のセールスから逃れることはできない

登記簿は公になっているので、相続で不動産を取得したことを誰にも知られないようにしておく方法はありません。したがって、不動産業者からのセールスを受けることは仕方ないものとして諦めるしかないところです。

③不動産業者は情報をどこから入手しているのか

1.業者は名簿屋からリストを買っている

世の中には色々な商売があるもので、「名簿屋」という業者が存在します。名簿屋は、法務局から直近で相続登記があった不動産の情報だけを抽出して取得し、名簿一覧にしたデータを不動産業者などに売っています。人海戦術で、片っ端から変更された不動産登記を当たってデータ化していると想像するところですが、実際にはもっと簡単な方法で資料を集めています。

2.不動産登記受付帳とは

相続による登記を調べるためには、「不動産登記受付帳」の行政文書開示請求をすれば可能です。不動産登記受付帳は、不動産登記のうち変更・新設されたものの一覧表で、閲覧もしくは複写ができるものです。

法務局の担当窓口で行政文書開示請求書の書類をもらい、知りたいエリアと時期、さらに相続による登記物件に絞るために、「相続のみ」と書き加えて資料請求すれば、一覧にしたデータが開示されます。

ただし、このデータには土地の住所と登記更新の理由が記載されているだけで、相続人の名前は記載されていません。また、記載されている住所は「住居表示」ではなく、登記簿用の「住所(地番)」なので、そのままではDMを送ることもできません。そこで名簿業者は、地番をもとに、改めて法務局で登記簿を取得して、現在の所有者と住所を入手します。

不動産業者が法務局に独自で請求することも可能ですが、法務局に直接出向くなど、ある程度の手間がかかります。また、登記簿の取得にも費用もかかります。1件数百円ですが、大量に取得すればかなりの費用になってしまうので、名簿屋の情報を仕入れたほうが合理的です。

④あるべき不動産の売却の方法

相続登記をすると、登記簿に住所と氏名が登記されます。名簿屋によってリスト化されると、不動産業者からのセールスは防ぎようがありません。とくに、不動産の価格が高い地域や人気エリアなど、不動産の流通性の高い場所ほど、不動産業者の営業が集中する可能性が高まります。

電話勧誘やDMでアプローチしてくる不動産業者のなかには、売り急がせるなど、必ずしも相続人の利益を優先しない会社が少なくありません。相続した不動産物件を現金化するために売り急ぐと、足元をみられて安く買いたたかれるリスクが高まります。

実際に相続した実家を売却したいと考える場合は、営業をかけてくる業者ではなく、自ら調べて納得のうえで、信頼できる不動産業者に依頼をするのが間違いない方法です。実際の流通価格がいくらなのかを知り、売買実例を比較することによって、流通する適正価格もわかってきます。

行方不明の相続人がいる場合のやっかいな相続手続き

遺産分割は相続人全員で行わなければならず、相続人一人でも欠けた遺産分割協議は無効になってしまいます。しかし、遺産分割協議をしようと思った際に全ての相続人と連絡がとれる状態にあるとは限りません。たとえば兄弟相続のケースや、代襲相続や数次相続が重なると、相続人の関係が疎遠になり、連絡が取りにくくなります。音信不通で所在がわからなくなってしまった相続人がいるケースもあります。

そこで今回は、音信不通で連絡が取れない行方不明の相続人がいる場合の相続手続きの方法を解説します。

①連絡がとれない相続人の種類

連絡が取れない相続人は、大きくわけて2種類あります。

1.単に連絡先がわからない場合

疎遠にしていたため、相続人の連絡先がわからないケースが考えられます。この場合は、身近な親族に聞いて、連絡先を知らないか確認するところからはじめます。もしかしたら親戚の誰かが、その人の連絡先を知っている可能性があります。

行方不明者がSNSを利用していて、インターネットで探したところ、見つかったというケースもあるそうです。

2.生死不明の場合

行方不明で音信不通、生死すら不明の場合については、戸籍をたどることで発見に至る可能性があります。さらに、その方法で発見できない場合は、不在者財産管理人の選任を検討することになります。

1)戸籍の附票で住所を調べる

電話番号や現在の住所がわからなくても「戸籍の附票」によって現在の相続人の住所を調べることができます。戸籍の附票は、本籍地の役所で戸籍の原本と一緒に保管されている書類で、その本籍地にいる間の最初から最後までの住所変更の履歴が記載されています。

これにより行方不明者の最終の住所地を調べることができます。請求は相続人の本籍地の地区町村役場に申請しますが、郵送での請求も可能です。

2)傍系の親族関係の場合

戸籍の附票を請求できるのは一部の範囲内の親族に限られています。当該の行方不明の相続人との関係が「直系(親子や祖父孫など)」であれば、自らの地位で戸籍謄本を請求できますが、「傍系(兄弟や叔父甥など)」の親族の場合は、相続関係を証明したうえで請求しなければならないので、手間がかかります。

弁護士、司法書士行政書士などの国家資格者は職務上請求(国家資格者による職権請求)を使って附票を取得することが可能です。そもそも連絡が取れない相続関係は、傍系のケースが多いと思われるので、はじめから専門家に依頼をして、戸籍謄本や住民票除票、戸籍の附票を職権で取得してもらうのが賢明でしょう。

3)不在者財産管理人の申し立て

戸籍の附票によって現住所が判明した場合でも、実際に生死不明の相続人が届出の住所に住んでいない可能性は十分あり得ます。最終の現住所が判明している場合は手紙を送って確認してみましょう。あるいは、その住所に直接訪問してみる方法もあります。応答があったり、所在確認ができれば、その先は遺産分割の話を進めていくことができます。

その住所に全く住んでいる気配がないようであれば、法的な手続きに進みます。それが「不在者財産管理人」の選任です。

②不在者財産管理人の選任と失踪宣告について

1.不在者財産管理人選任手続きと遺産分割協議

相続人が行方不明の場合、相続人は家庭裁判所に「不在者財産管理人の選任申立てを行います。不在者財産管理人となる人は、家庭裁判所によって選任された人(弁護士、司法書士などの士業)、もしくはそれ以外の人です。親族でも構いませんが、遺産分割協議の際に、利益相反関係となる親族は不適とされるので注意してください。そのほか、手続きをする際に30~100万円の予納金を求められることがあります。

家庭裁判所へ選任の申立てを行ったあと、家庭裁判所は不在者であるかどうかの審理を行います。審理には数か月ほどを要し、不在者財産管理人の選任まで、半年ほどの時間がかかるのが通常です。遺産分割協議を急いで行う必要がある場合には、速やかに申立て行うことが重要です。遺産分割協議は、不在者財産管理人を含めて、相続人全員で行います。

2.失踪宣告の申し立て

行方不明の相続人については、行方不明となってから7年以上経っている場合は、不在者財産管理人ではなく、「失踪宣告の申立て」が可能です。失踪宣告が認められると、行方不明者は死亡扱いとなるので、その人抜きで相続手続を進めることができます。

3.不在者の権利

不在者は現在行方不明であっても、相続の権利は有しています。したがって、不在者の財産を奪うような遺産分割協議の内容は認められていません。具体的には、不在者が法定相続分以上の財産を取得するような内容にしなければなりません。

③相続人に不在者がいる遺産相続の注意点

1.不在者財産管理人の処遇について

不在者財産管理人は、本来あくまでも暫定的な立場であり、相続手続きを進めるために選任されています。不在者財産管理人は、不在者が現れるか死亡(失踪宣告も含む)するまで、財産の管理を続けなければいけません。その間、管理費用も発生し続けます。

したがって、当該の相続人が、生死不明状態が続いているのであれば、失踪宣告を申請することになりますが、失踪宣告認定のハードルは高いことについては知っておきましょう。

2.相続税の申告に間に合わない

相続税の申告は、相続開始の翌日または相続開始を知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。相続税の申告と納付は、相続人それぞれが相続した分に応じて行います。

納税期限を過ぎると延滞税が課せられます。ところが、遺産分割協議が終わっていなければ、誰がどの相続分に対して納税すべきかが決まりません。

この場合には、相続人各自が法律相続分に合わせて期限内に申告、納税します。その後、行方不明の相続人の処遇が決まって遺産分割が完了した段階で、改めて修正申告を行う必要があり、手続きが二度手間になってしまいます。

④不動産を放置しておくと

一定額の遺産以内であれば相続税は発生しないので、煩雑な相続義務を放置しているケースもありますが、好ましくありません。

遺産に不動産が含まれていればl、当該の不動産に関する責任は相続人全員にあります。たとえば固定資産税は、相続人全員が支払う義務を負っています。法改正により、不動産相続に伴う登記も義務化されています。また、家屋を管理せずに放置しておくと、万が一建物が倒壊したり火事になって他人に損害を与える可能性も考えられます。第三者に損害を与えた場合、相続人全員が責任を追うこととなります。

とくに遺産に不動産がある場合は、不在者財産管理人を早急に選任し、早期に遺産分割協議を進めることを検討しましょう。

相続は「行政書士 服部祥明(はっとり・よしあき)事務所」にお任せください。

誠心誠意、ご依頼者様の立場に立って遺言書および遺産分割協議書を作成いたします。お問い合わせは以下まで。全国対応、秘密厳守いたします。

行政書士 服部祥明事務所

住所:名古屋市中区金山1-11-10 金山ハイホーム1002号

電話:052(228)3473

メール:yyy@office-yhattori.com

 

ペット信託の注意点

高齢者がペットを飼育する際、自分がペットより先に亡くなる、あるいは事故の後遺症や病気など、さまざまな理由から、飼育が困難になることがあります。このような事態を想定して、飼い主に代わって、ペットの飼育を継続してくれる人を想定しておくことは、とても大切です。

そこで登場したのが「ペット信託」という、あたらしいアプローチです。大変魅力的な仕組みなのですが、諸手を挙げて安心できるとは限らない点もあります。

そこで今回は、ペット信託を検討する際に、確認しておくべきポイントを紹介します。

①ペット信託の仕組み

ペット信託を解説するまえに、「信託」という仕組みを説明します。そもそも信託とは、自分の財産を第三者(受託者)に託し、自分(委託者)に代わって管理や運用をしてもらうシステムです。

信託制度は。以前は信託銀行や保険会社などの企業が受任する形が一般的でしたが、受託者を親族が担う「家族信託」という仕組みが構築されました。そして、「財産の管理」を「ペットの飼育」に応用したものがペット信託というわけです。

具体的には、飼い主(委託者)が病気や怪我による飼育困難な状況になった、あるいは死亡した場合に、あらかじめ信託関係を結んでいた受託者に、委託者の財産から飼育費を支払うことで、ペットが生涯安心して生活できるようにするという内容です。契約の形態としては、受託者がそのまま里親になるケースのほか、受託者が里親探しをするケースもあります。

②ペット信託の手続き

1.信託契約書の作成と契約

ペットの飼育の内容や、飼育をするために必要な費用を信託財産から支払うこと等を記載した「信託契約書」を作成します。のちのトラブルを避けるために、公正証書による契約書の作成が好ましく、契約は公証役場で締結します。

2.信託契約専用の口座開設

銀行に信託契約専用の口座を開設し、契約書に記した費用を入金します。信託金は受託者が管理します。信託契約が開始すると、受託者が口座から必要な金額を引き出し、費用に充当します。

3.信託契約の注意点

1)遺言書を同時に準備しておくこと

先に述べたように、ペット信託契約は公正証書によるべきですが、同時に遺言書を作成し、そのなかでペット信託についても記しておくべきです。せっかくペット信託を契約しても、委託者の親族がその事実を知らないと困ります。

飼い主の「もしも」に備えて。遺言書にペット信託の契約内容を明記しておきましょう。

2)信託監督人を任命しておくこと

一旦委託者の手から離れてしまえば、その後、ペットが適切な飼育がされているかどうかについて、委託者自身が調査することは容易ではないと思います。ましてや、委託者が亡くなったあとでは、確認のしようがありません。

そこで頼りになるのが、「信託監督人」の存在です。信託監督人は飼育状況を監視し、もし信託内容どおりに適正な飼育がなされていない場合は、受託者にその事実を指摘し、改善を命じ、契約通りに業務を遂行させる権限を有します。

③ペット信託の費用

ペット信託をするためには、初期費用と飼育費用の2つの費用が必要です。

初期投資は信託契約書の作成料など、飼育費用には、食費やトイレ用品、医療費などの飼育用品のほか、受託者への報酬が含まれます。

飼育費用はペットの種類や余命、病気の有無などによって変わってきますので、一概にいくらと明記できませんが、下記が参考的な金額になります。

・信託契約書作成費用 15~20万円

・飼育費用 年あたり25万円程度(小型犬の場合)

・受託者への報酬 年あたり10~50万円

信託金の払い込みの方法については、契約開始の時点で、初期費用から飼育費用、受託者への報酬まで一括で入金するケースもあれば、実際に信託契約がスタートした時点でそれらの総額を預けるケースなど、契約内容によってさまざまです。

④ペット信託の弱点

注目されているペット信託ですが、サービスが始まってから日が浅いこともあって、まだまだ整備不足の部分もいくつかみられます。

1.里親探しが難しい

ペット信託を検討する際に、すぐに里親がみつかるかどうかは、大変気になるところだと思います。

前述のように、ペット信託では、受任者がそのまま里親になることもあれば、飼育施設(老犬ホームやペットシッター)に譲渡したり、あらたな飼い主に引き継ぐ場合もあります。最近はペット信託を扱う専門業者も増え、NPO団体も積極的に活躍しているとはいえ、タイミングやペットの状態によっては、里親探しが難航することも考えられます。

ペットは家族ですから、あたらしい飼い主が誰でもいいというわけにはいきません。委託者の希望はさまざまですから、そのような条件を全て受け入れてくれる里親がなかなか見つかりにくいのが現実です。

2.ペット信託を扱う専門家が少ない

ペット信託のもうひとつのデメリットは、専門家の少なさです。信託契約の内容を決めたり、契約を交わすためには、専門的な知識が必要になります。しかし、ペット信託は新しい仕組みなので、専門に取り扱っている事務所や専門家はまだ、多くありません。

近年はインターネットでも業者を探すことができますが、納得できる事務所や専門家を探すとなると、飼い主にはかなりの労力がかかるはずです。

3.最大の課題は費用問題

実際問題として、ペット信託はかなりお金がかかります。ペット信託を検討している飼い主のなかからは、「費用が高く、気軽に手を出しづらい」という声も多く聞かれます。

ただし、実はその費用のほとんどは飼育代です。飼い主が自分で飼育しても同じようにお金がかかるのですが、信託契約の場合、そのお金を事前にまとめて信託口座に入金しなければならないことが、信託契約を結ぶ際のネックになるのです。

遺言執行者を辞任することは難しい

「遺言執行者」というのは、亡くなった人の遺言の内容を、ほかの遺族に代わって実現化していく役割の人です。遺言執行者は遺言書により指名されます。弁護士、司法書士行政書士など、法律の専門家が就任する場合もありますが、親族のなかから指名されるケースもあります。そこで今回は、親族の遺言執行者を引き受けた際の注意点と対策をお伝えします。

①遺言執行者の役割

遺言執行者の業務は煩雑な手続きを伴い、遺言執行者にはとても重要な責任が課されます。ちなみに、遺言執行者の指定がない場合は、相続人全員でそれらの手続きをしていくことになります。

遺言執行者の具体的な役割には、以下のようなものがあります。

・死亡届や葬儀の手配

・相続人の調査

・相続財産の調査および相続財産目録の作成

・金融機関の手続き

・相続財産の名義変更手続き

これらのなかには専門的な知識を必要とするものもあります。普通の方にとっては、これらの手続きは初めてのものも多く、ひとつひとつの業務をとても難しく感じるはずです。

また、金融機関の窓口や役所は平日の日中しか対応してくれないので、仕事をもった人が執行者を務めることはかなり困難なものです。だからといって、途中で投げ出したり先延ばしにすることも許されません。

②遺言執行者を辞任することはできるか

実際、手続きを始めてみたものの、とても自分一人ではできそうになく、途方に暮れてしまったという話をよく耳にします。このような場合に、執行者を辞任することは可能でしょうか。

1.遺言執行者を辞退することは難しい

結論からいえば、遺言執行者を一旦引き受けてしまえば、「やむを得ない事情」が認められる以外は、辞任することは困難です。たとえば「仕事が忙しい」という理由は認められません。

2.難しければ、はじめから引き受けるべきではない

そもそも、遺言書で遺言執行者に指定されていても、強制力はありません。自分には荷が重すぎると感じるのであれば、はじめから就任を承諾しなければいいのです。特別な理由も必要ありません。早めに就任しないことを相続人や利害関係者に伝えれば問題ありません。

つまり、最初から遺言執行者を引き受けないことはできるが、一旦引き受けると辞任することは難しいのです。

③辞任はできないが委任ならできる

遺言執行者を辞任することは正当な事由がなければ難しいと解説しましたが、遺言執行者としての職務を第三者に「委任」することは認められています。

遺言執行者の委任については、2019年7月1日の民法改正により、それ以前と以降で扱いが大きく扱いが変わりました。

1.民法改正以前

亡くなった方が残した遺言が2019年6月30日以前の作成日付である場合は、遺言執行の職務の委任は「やむを得ない事情がある」場合と、遺言書に遺言執行者の復任権を認める記述がある場合に限定されていました。

ちなみに「やむを得ない事情」とは、健康悪化、海外転勤などの特別な事情によって、遺言執行者としての活動ができなくなったケースなどが考えられます。

2.民法改正後

民法改正によって、原則として、遺言執行人が自由に第三者に遺言の執行を任せることが可能になりました。また、この際に、相続人等の同意を得る必要もありません。ただし、遺言書に、「遺言執行を第三者に委任することを禁止する」という記述がある場合については、委任は認められません。

1)責任はあくまでも遺言執行者にある

遺言執行を第三者に委任した場合には、その責任は全て遺言執行者が負うことになります。代行者が他人に損害を出せば、その責任は遺言執行者に返ってきますから、慎重に人選しなければなりません。

2)職務の一部委任も認められる

遺言執行者としての職務の一部だけを委任することも可能です。 だいたいのことは自分でもできそうだから、特定の手続きだけお願いしたいという形の委任も認められています。

④ぜひ行政書士に依頼してください

遺言執行者の職務委任は、ぜひ専門の行政書士に依頼してください。相続手続きに詳しい行政書士であれば、相続財産の調査から名義変更等の各種手続きまで、全てスムーズに進めてくれます。費用は弁護士や司法書士より安価です。

「相続人の調査だけ」「相続財産目録の作成だけ」というオーダーも可能です。このように、状況にあわせて必要な範囲で委任をすることにより、委任費用を抑えることができます。

 

相続は「行政書士 服部祥明(はっとり・よしあき)事務所」にお任せください。

誠心誠意、ご依頼者様の立場に立って遺言書および遺産分割協議書を作成いたします。お問い合わせは以下まで。全国対応、秘密厳守いたします。

行政書士 服部祥明事務所

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在留資格取得の基本

在留資格を取得するためにはいろいろと複雑な手続きが必要です。今回は、「在留資格」を獲得するための「資格認定証明書」の交付手順と、在留期間を更新、変更する際の申請手順を解説します。

①    在留資格認定証明書交付申請
最初に、混同されることが多い「ビザ(査証)」と「在留資格認定証明書」の違いを確認しておきしょう。査証も在留資格も「ビザ」と呼称されることが多いので、混乱する原因となっています。

1.査証と在留資格の関係について

1)査証(ビザ)とは何か
査証(ビザ)は日本入国のための条件として、在外日本公館において旅券に貼付されるものです。その旅券が有効であり、ビザに記載された範囲(旅行やビジネスなど)で日本に入国させることを認める「推薦状」のようなものだと考えておくといいでしょう。

2)在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に在留して中長期に活動できる身分を類型化したものです。就職や留学など、それぞれ入管法で定める「在留資格」に該当する旨の認定を受けることによって、日本での活動が可能になります。
日本在留中の活動範囲は原則として決められた在留資格に限定されます。在留資格以外の「収入を伴う活動」を日本在留中に行うことは認められません。

3)外国人が中長期で日本に滞在するために必要なもの
在留資格認定証明書の対象者は、日本に中長期滞在する外国人です。外国人が日本国内で中長期にわたって活動するためには、「パスポート」「査証(ビザ)」「在留資格認定証明書」の3点が必要です。認定証明書は法務省が発行し、ビザは外務省が発行します。

2.活動内容による在留資格の違い
在留資格には、大きくわけて就労資格(外交・芸術・報道・高度専門職・教育など)と非就労資格(文化活動・留学・研修・永住者・日本人の配偶者など)の2つがあります。

1)就労資格について
就労資格のうち、「技術・人文知識・国際業務」を説明しましょう。この活動の典型例のひとつが「通訳・翻訳」で、貿易会社や翻訳事務所などで働く外国人が該当します。在留資格を認められるためには、在留資格を得ようとする「申請人(外国人)」と、申請人を受け入れる「会社」の双方が条件を満たしていなければなりません。

具体的には、「申請人」は海外の大学や専門学校を卒業し、充分な日本語の能力があるかどうかが問われ、受け入れ側の日本の「会社」は、その外国人を必要とする仕事量があるかどうかが問われます。

2)非就労資格について
非就労資格のうち、配偶者ビザ(結婚ビザ)を例に説明します。日本人が外国人と結婚するケースや、日本在留の外国人同士が結婚するケースなどが考えられますが、日本人が外国人と結婚して日本で暮らすケースで解説します。
この場合は、まずは国際結婚手続きを経てから、次に「日本人の配偶者等」在留取得の手続きを行います。海外にいる配偶者を日本に呼び寄せる場合は「在留資格認定証明書交付申請」、日本にいる外国人と結婚する場合は「在留資格変更許可申請」が必要です。
住所地を管轄する入国管理局に申請書を提出して許可を得てから、市区町村役場に結婚届を提出し、日本人の戸籍に記載が完了すれば日本で夫婦として認められます。

②在留期間更新許可申請

1.在留期限とは
在留資格に基づいて日本に居住して働く外国人には在留期限が設定されています。通常は「1年」もしくは「3年」の期間が設定されていますが、「15日」「30日」「90日」といった短期のケースもあります。
在留期間を越えてさらに日本に在留したい場合は、在留している本人(もしくは法定代理人)や取次者が入国管理局に「在留期間更新申請」を行います。申請をせずに在留期限を過ぎてしまうと「オーバーステイ」となり、最悪の場合は入管や警察に拘束されることがあります。

2.在留期間更新許可申請のポイント
在留期間更新が許可されるかどうかについては、以下のポイントが重要な判断材料になります。

・活動内容が在留資格に該当していること
・素行が不良でないこと
・独立した生計を営むことができる資産や技能があること
・納税義務を果たしていること

新規の申請の場合、在留期間は「1年」であることが多いです。入管としては、その外国人の方が日本において経済的に安定して生活ができるかどうか、とりあえず「1年」という期間で状況を見極めたいという意向があるからです。
ケースにもよりますが、最初の2年間は「1年」ごとの更新で、在留状況や経済的安定の状況を考慮して、その後順調に活動していることが認められれば、それ以降は「3年」の許可が下りるケースが多いようです。

在留資格変更許可申請

1.在留資格変更許可申請とは
在留資格を有する外国人が現在の在留資格と違う活動を行う場合には、出入国在留管理局で在留資格の変更申請をしなければなりません。留学生が学校を卒業して日本の企業に就職する場合や、日本人と結婚してそのまま日本に在留する場合には、「在留資格変更許可申請」が必要です。

2.「留学資格」から「技術・人文知識・国際業務資格」への変更
留学生が日本国内で就職するケースを例に説明します。日本の大学や専門学校等で学んだ留学生は、「留学」資格のままでは日本の会社に就職することができません。在留資格変更許可申請を行い、「技術・人文知識・国際業務」という在留資格への変更が必要になります。

3.在留資格変更許可申請のポイント
留学生は日本の大学や専門学校等を卒業し、一定の日本語の能力を備えていると考えられるので、おそらく「技術・人文知識・国際業務」の条件を満たしているだろうと思います。したがって、許可が認められるかどうかは、多くの場合は受け入れ会社側の条件次第ということになります。入管は、本当にその人が必要となる業務内容が、その会社にあるのかという点をチェックします。
なお、留学生が就職する場合には、留学生本人の「在留資格変更許可申請」とともに、就職先の会社の決算書などを提出しなければなりません。留学生本人に書類を預けることについては、業務上の秘密もあり、就職先の会社にとっては心配材料となるかもしれません。このような場合には、専門の行政書士に代理申請を依頼すれば不安は解消されるでしょう。

④就労資格証明書

1.就労資格証明書とは
「就労資格証明書」は、就労の在留資格を持つ外国人が転職した場合などに、新しい勤務先での就労内容が、現在の在留資格の活動に含まれていることを確認するための証明書です。

2.就労資格証明書が必要な理由

1)就労資格証明書が必須の場合
たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持ち、貿易会社A社で通訳・翻訳担当者として働いていた外国人が私立高校Bに転職し、英語講師として働くケースをみてみましょう。
A社とB高校では従事業務が変わるため、「技術・人文知識・国際業務」から「教育」へと在留資格を変更して、あらたに英語講師の業務に就くことになります。

2)就労資格証明書が必須ではない場合
一方で、同じ外国人がA社を退職して貿易会社C社に転職し、引き続き通訳・翻訳担当者として働く場合はどうでしょうか。
転職後の仕事の内容が同じであれば、在留資格の変更をしなくても問題ありません。ただし注意しておきたいのは、その外国人の「技術・人文・国際」の在留資格は、A社で通訳・翻訳の業務に就くことを前提に許可されたものだということです。

3.就労資格証明書を取得してリスク対策を
在留資格の変更をしないで、次の在留期間更新申請の際に転職先C社の会社資料を提出して許可を得る方法もありますが、万が一C社が外国人の受け入れに適していない会社であるという判断をされてしまうと、その外国人は在留できなくなってしまいます。
このようなリスクを回避するために、就労資格証明書は力強い味方になってくれます。なぜなら、就労資格証明書には、新しい勤務先C社での従事業務が「現在の在留資格の活動に含まれる」ことを入国管理局が確認するという意味があるからです。別の言い方をすれば、就労資格証明書というのは、在留資格認定証明書の手続きをあらかじめ行い、その外国人が問題なく転職先の会社でも働き、在留できることを証明するための手続きになるのです。

 

無人販売所と防犯対策

無人販売所といえば、かつては田舎の畑の道端で野菜を売っているイメージがありましたが、現在は、コロナ禍における非接触ニーズに応える形で、餃子や高級牛肉、パンやスイーツ、ご当地グルメなど、さまざまな冷凍食品の無人販売所が増えています。

無人販売所のビジネスモデル

1.無人販売所が選ばれる理由

無人販売所の特色は「ローリスクローリターン」のビジネスモデルだということです。初期投資が少なく、人件費がほとんどかからないのでランニングコストも低く抑えることができます。

その分、利益幅は小さくなりますが、赤字にもなりにくい傾向があります。これらが不安定な経済環境下において、あらたなビジネスモデルとして、好感をもたれている理由でしょう。

2.無人販売所をはじめるために

たとえば、田舎の畑の前で野菜を無人販売するのであれば、特別な許可や届出は必要ありません。しかし、店舗を設けて、加工食品などを販売するためには、保健所の営業許可と食品衛生責任者の資格が必要です。

そのほか、飲食店の営業許可は店内での飲食提供に対する許可に限られるので、飲食店の厨房で調理したメニューをパッケージ化して販売する場合は、商品に応じた製造業、販売業の許可が必要になります。

たとえばラーメンであれば「めん類製造業」、「食肉製品製造業」、「調味料等製造業」など、冷凍餃子などの冷凍食品であれば「食品の冷凍又は冷蔵業」の営業許可が必要です。

②メリットとデメリット

1.無人販売所のメリット

無人販売所の最大のメリットは、コストの圧縮が可能なことです。接客や会計などの人件費は不要、24時間営業も可能なので、時間ごとの家賃も削減できます。

もうひとつのメリットは、事業転換が容易にできることです。たとえば、餃子を扱っていた店舗が、過当競争によって売上が下がってきたと感じた場合、「次はパンだ」とばかりに、すぐに扱い商品を替えることが可能です。

2.無人販売所のデメリット

これは、いうまでもなく、盗難です。実際に、無人販売所を狙った窃盗事件が相次いでいます。商品の持ち去りや、料金箱の破壊などが多発するのは、防犯カメラやセンサーなどの設備があっても、人間による監視がないことが原因です。人目がないので、どうしても犯罪のハードルは下がってしまいます。

また、24時間営業の店舗では、犯人は犯行時間を自由に選ぶことができます。とくに深夜や早朝が狙われ、警察の初動も遅れます。これも困った問題です。

犯罪以外の問題としては、店員がいないために、品質管理や衛生管理が怪しくなりがちという課題もあります。たとえば、来客が冷蔵庫の扉を開けたままにして立ち去り、食品の鮮度が落ちる可能性も考えられます。

③犯罪対策の今後

1.犯罪対策の限界

無人販売所のビジネスは、利益幅は小さくてもランニングコストが低いという特徴があります。店舗にとって、万引きや犯罪は、経営を圧迫する死活問題です。犯罪対策として、防犯保険に加入している店舗もありますが、薄利商売において高い保険料は利益を圧迫しかねません。

2.万引き犯人の映像公開に抑止効果はあるか

テレビのニュースなどで、防犯カメラにおさめられた万引きの生々しい映像を目にすることが増えました。独自にYouTubeで万引き現場の映像を公開している店舗もあります。これらの万引き現場の映像の公開が、多少なりとも「万引き対策」の抑止効果となりうるかもしれません。

もっとも、世の中には犯罪予備軍が一定数存在することは間違いなく、このことは、回転ずしチェーンでの迷惑動画の例が証明しています。無人店舗であることは、それだけで犯罪のハードルを下げる効果があります。したがって、残念ながら、今後も万引き等の犯罪行為は、無人販売所の経営を圧迫する要因であり続けることは避けられないでしょう。

無人販売所はまだ発展途上のビジネスです。今後はさらに競争が激化することが予想され、その中で、売上げ対策とともに、より効果的な犯罪対策に知恵を絞っていく必要がありそうです。

生命保険にはどれぐらい税金がかかるのか

生命保険を受け取る際に、税金がかかる場合があります。今回は税金がかかる保険契約について、またどれぐらい税金がかかるのかについて解説します。

①税金がかかる保険金とかからない保険金

いわゆる保険金と呼ばれるもののなかでも、税金がかかるものとかからないものがあります。最初に整理しておきましょう。

1.税金がかかる保険金

以下の保険金については、それぞれ以下のような税金がかかります。

・死亡保険金…相続税もしくは贈与税

・満期保険金…所得税もしくは贈与税

・解約返戻金…所得税

個人年金保険所得税もしくは贈与税

2.税金がかからない保険金

以下の保険金については、税金はかかりません。

医療保険

がん保険

介護保険

・その他(高度障害保険、リビングニーズなど)

②課税対象になる保険金

死亡保険金や満期保険金には税金がかかる場合がありますが、契約者・被保険者・受取人が誰になるかによって、税金の種類が異なります。それとともに課税額が変わるケースもあります。詳しく見ていきましょう。

1.遺族が受け取る場合

1)契約者と受取人が一致する場合

たとえば、本人が契約して保険金を支払い、配偶者や子どもを受取人に指名した場合は、「みなし相続財産」として、受取人に相続税がかかります。ただし、一定の金額以内であれば、税負担を軽減する「非課税限度額」という優遇措置が設けられ、以下の範囲で課税免除が認められています。

非課税限度額=500万円×法定相続人の数

2)契約者と被保険者、受取人が異なる場合

死亡保険金の契約者、被保険者、受取人が別人である場合は、贈与税がかかります。たとえば、妻が亡くなった場合のために死亡保障を夫がかけ、保険金の受取を子どもにした場合には、子どもへの贈与となり、贈与税がかかります。満期保険金や解約返戻金、個人年金も同様です。

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与された金額が対象となります。対象額から基礎控除(110万円)を引き、残った金額に応じた税率で贈与税がかかります。

税率…10~45%

2.第三者が受け取る場合

基本的に、保険金の受け取りは配偶者と二親等以内の血族とされていますが、例外的に第三者の受け取りが認められる場合があります。具体的には、籍を入れない事実婚のケースや、同性婚カップルなどのケースです。

三者が保険金を受け取った場合には、贈与税がかかります。

③死亡保険金で相続税がかかる場合の具体的な計算例

相続税は、相続の対象となる総資産に対して課せられます。課税対象となる生命保険のほか、不動産、金融資産などの合計金額が対象になります。

1.相続税全体における基礎控除

相続税全体についても、死亡保険金の場合と同じように、一定の非課税枠(基礎控除)が設けられています。基礎控除額は次の計算式で算出します。

基礎控除額=3000万円+(法定相続人の数×800万円)

2.具体的なサンプルで解説

具体的なサンプルを使って、死亡保険金で相続税がかかるケースを見ていくことにしましょう。配偶者と2人の子ども、合計3人の家庭を例に、以下の遺産相続のケースで説明します。

1)課税対象となる相続資産

・不動産と金融資産…6000万円

・死亡保険金…2000万円

この場合の相続税は以下の計算式によります

1)死亡保険金の遺産総額への加算額…(2000-1500)=500万円

2)遺産総額…(6000+500)=6600万円

3)課税遺産総額…(6500-4800)=1700万円

つまり、1700万円に対して相続税がかかることになります。

2)非課税枠の配分について

死亡保険金の受取人が複数の場合、非課税枠は個々が受けとった死亡保険金の額に応じて分配していきます。

たとえば、死亡保険金を以下のように配分したとします。

・配偶者…1500万円

・子どもA…250万円

・子どもB…250万円

死亡保険金の非課税枠は1500万円、課税部分は500万円です。課税部分の金額を相続割合で分配していきます。

3.実際の税額

それでは、実際に相続税がいくらになるか、計算してみましょう。

相続税は受け取る遺産額によって税率が異なり、計算が複雑になるため、今回の解説では割愛します。そこで、先ほどの「配偶者と子ども2人」のケースで相続税をシミュレーションし、おおまかな税額を算出してみることにします(課税額は非課税枠を勘案したうえで算出しています)。

相続資産総額5000万円⇒10万円

相続資産総額6000万円⇒60万円

相続資産総額7000万円⇒113万円

相続資産総額8000万円⇒175万円

相続資産総額9000万円⇒240万円

相続資産総額1億円⇒315万円

相続資産総額2億円⇒1350万円

相続資産総額3億円⇒2860万円

相続資産総額5億円⇒6555万円

このように、財産総額が大きいほど税率が高くなることがわかります(累進課税方式)。

④契約者、被保険者、受取人の関係を再確認する

夫名義の口座から保険料を引き落としたいという理由から、契約者が夫、被保険者が妻、受取人が夫になっている契約が見受けられます。

加入方法に問題はありませんが、「契約者=保険料を支払う人」なので、この契約のままだと、妻が死亡したときに、夫に支払われる保険金は、相続税ではなく「所得税」の課税対象となり、相続税の非課税制度を活用できなくなるので、結果的に損してしまいます。

契約後に契約者変更をすることは可能なので、加入中の保険を見直しする際などに、保障額や保険料、保険種類の見直しと同時に、「契約者・被保険者・受取人」の関係も忘れずにチェックしてみてください。

 

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