共有不動産を放置すると確実にトラブルになる

相続が発生した際に、相続人同士で揉める可能性があるケースにおいては、相続財産に関する話し合いをできる限り避けたいと思いがちです。しかし、不動産を複数人で相続することは絶対にやめてください。そう断言できるのは、「共有不動産」は、かならずトラブルの火種になるからです。

①共有不動産とは

「共有不動産」とは、複数人でひとつの不動産を所有している状態の物件のことです。たとえば、兄弟(長男A、次男B、三男C)の3人で不動産を相続し、共有とした場合、以下の割合(共有持分)で当該不動産の所有権を共有し、そのように不動産登記に記録されます。

長男A…1/3  

次男B…1/3

三男C…1/3

1.共有不動産が問題化する原因

共有不動産には、共有者の単独行為が制限されています。以下のような行動制限がかけられ、事案によっては独断で自由に扱うことができません。

・不動産の売却、建物の取り壊し…共有者全員の合意

・賃貸契約の締結・解除、リフォーム…共有者の過半数の合意

・補修工事、無権利者に対する明け渡し…共有者1名の単独で可能

2.共有不動産が発生する原因

共有不動産が生まれる原因には、2つあります。

1)被相続人の代から共有名義で、そのまま法定相続分で相続した

たとえば、親(D)が他人(E)と不動産を共有しているケースでは、Dが亡くなったあと、子ども(F)と(G)が共有で相続すると、「他人(E)と、(D)の子ども(F)(G)」が共有状態になります。この先、この不動産の共有状態を放置しておくと、代替わりによって、さらに枝分かれがすすんでしまいます。

2)相続が発生して初めて共有名義となった

夫婦の一方が亡くなった場合、相続した不動産を、「とりあえず」配偶者と子どもの共有にしておくケースはときどきみられます。そのほか、冒頭で言及したように、相続の合意が得られず、相続人の共有にしておくケースが考えられます。

②共有名義の不動産が相続トラブルにつながる理由

共有不動産がトラブルにつながりやすい理由について、代表的な理由をご紹介します。

1.相続人の意見が合わない

共有不動産には、いくつかの行動制限がかけられているので、共有者の意見が合致しなければ、不動産の活用方針を決めることが困難になってしまいます。

共有者はそれぞれ、経済状況が異なります。たとえば、共有者のひとりが不動産の売却を希望しても、全員の合意が得られなければ売却はできません。

2.共有持分に応じて賃料が発生する場合も

各共有者は共有持分に関わらず、単独で不動産の全部を使用することができます。共有不動産が家屋であれば、ひとりの共有者が他の共有者の同意を得ずにその家に住むことができ、他の共有者は明け渡しを求めることができません。

ただし、単独で不動産を使用している共有者は、共有持分に応じて他の共有者に賃料相当額を支払う必要が生じます。このような場合に、妥当な賃料額をめぐる争いが発生する可能性があります。

そのため、多くの場合、共有不動産は誰も住めない状況になります。

3.固定資産税や管理費

共有不動産にも固定資産税が発生します。そのほか、マンションであれば管理費や修繕積立金、一軒家であれば光熱費や維持費が発生するでしょう。

先ほど説明したとおり、共有者間の話し合いがまとまらなければ、共有不動産は放置される傾向があります。そうなると、共有者の誰が不動産の管理をするのか、管理費用をどのように負担するのか、といったお金の問題をめぐって共有者間でトラブルになることがあります。

4.共有者と連絡が取れなくなってしまう

共有者同士の人間関係が希薄になり、連絡が途絶えてしまうケースが散見されます。そのまま連絡もせずに放置していると、誰が共有者であるかを把握することすら容易ではなくなります。共有者と長らく連絡を取っていない間に共有者が亡くなり、子どもや配偶者に不動産が相続されている可能性もあります。

共有者のひとりが不動産を売却したいと考えたときに、初対面の共有者と処分についての話し合いを進めていくことが難しくなることは、十分予想できます。

5.持分の売却

ひとりの共有者が独断で、共有不動産を売却することはできませんが、各自の「持分」は他の共有者の了解がなくとも、自由に売却できます。もし、共有者の持分が悪質なブローカーなどに買い取られてしまうとすれば、相当なリスクになります。

③共有名義の不動産を相続したら

共有名義の不動産を相続し、共有状態のまま放置しておくと、いずれは相続や持分売却を繰り返して共有者が拡大、複雑化し、ますます収拾不能になってしまいます。

傷が大きくならないうちに、ぜひ共有から単独への変更、もしくは売却を検討してください。税金対策として不利になる可能性もありますが、早期の解決がベターです。

1.共有不動産の遺産分割方法

共有不動産の遺産分割方法としては3つの方法があります。

・換価分割…不動産の売却代金を相続人間で分配する

・代償分割…相続人の1人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う

・現物分割…不動産を分割(分筆)して、それぞれを単独所有する

2.遺産分割調停、審判

遺産分割を実行する際には、相続人全員の合意が必要です。相続人同士の話し合いが難しい場合には、家庭裁判所において「調停」を選択することが可能です。調停で合意できない場合は、さらに「審判」にすすみます。

3.共有者と連絡がつかない場合の対処法

共有者と連絡がつかなくなった場合には、「不在者財産管理人」を選任し、遺産分割を代行してもらう方法があります。

④共有不動産を放置してはいけない

長期にわたって共有不動産を放置しておくと、相続による代替わりがすすんでいきます。数世代経過すると、共有者が数十人にも膨れていく可能性があります。こうなると、ほとんど収拾不能になってしまいます。次世代に争族の時限爆弾を残さないように、できるだけ自分の代でトラブルの芽をつんでおきましょう。

 

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ようこそいらっしゃいませ

①ブログ主はこんな人

岐阜市生まれ。高校まで生まれ故郷で過ごし、大学入学とともに上京、なにをトチ狂ったか落語研究会に所属。人情噺を得意とする。大学卒業後に名古屋のテレビ局に就職する。

元来インドア派であったものの、長年の営業外勤生活がたたり、プロレスラー武藤敬司と同じく膝に爆弾を抱えることに…。運動不足を解消するためにスポーツクラブに入会しようと思うが、すでに数年が経過。骨董(がらくた)蒐集が趣味で、つかまされた贋物は数知れず。妻1人、子ども1人。仕事に子育てに奮戦中。そのほか、猫を飼うべきかどうかなど、日々の小さな悩みも尽きない今日この頃です。

このたび、サラリーマン生活を経て、一念発起、行政書士事務所を開業。人生の後半戦、あらたなステージで微力ながらさまざまな悩みを抱える方のお手伝いができたら幸せに思います。

行政書士ってなんですか?

まずは、ここから話を始めたいと思います。行政書士ってどんな仕事だと思いますか?弁護士さんや税理士さんの仕事内容は一般に広く知られていますが、行政書士がどんなことをやっているのかなんて、普通は知らないですよね。たとえば行政書士司法書士の違いなんかも…。実はわたしも資格試験に挑戦するまで、よく知りませんでした。

1.行政書士とはこんな仕事

簡単にいうと、行政書士は官公庁に提出する許認可などの書類の作成や、生活やビジネスの相談を行っています。

建設業を開業したい

農地に住宅を建てたい

遺言書をつくりたい

自動車登録の申請をしたい

帰化申請をしたい

契約書を作成したい

著作権登録をしたい

会社を設立したい

たとえば、このような場合にはさまざまな手続きが必要です。もちろん、一般の方が自分自身で手続きを行うことも可能です。しかし、慣れない申請作業は時間がかかります。提出先の行政機関が異なるうえ、求められる書類も膨大です。このような複雑な許認可申請がスムーズに行なわれるように、相談から書類作成、提出代理までを行うのが行政書士の仕事なんです。

2.行政書士の専門分野とは

行政書士の業務範囲は非常に広いものです。一説には、その業務の種類は1000以上になるともいわれています。しかし、個々の行政書士がすべての業務を担えるわけではなく、「相続」「建設業許可」「帰化申請」「自動車登録」「NPO設立」「風俗営業」など、それぞれ専門分野をもって活動しているケースがほとんどです。

③ブログ主が行政書士を目指した理由

1.平成から令和へ

わたしはサラリーマンとしてそれなりに頑張ってきて、それなりに評価もされ、ほとんど後ろを振り返ることなく、年月を過ごしてきました。ところが、年号が平成から令和にかわったころから、少しずつ周囲の様子が変化してきました。先輩や同年代の人が亡くなったり、大きな病気になって会社を退職したり、あるいは新天地を目指して転職したり、起業する人を見かけることが増えてきました。

「このままサラリーマンを続けてもいいのだろうか?」

このような疑問がふつふつと浮かび上がり、わたし自身もあらたな道を探し始めました。

2.人の役に立ちたい

あるとき、古い友人と久しぶりに食事を共にする機会がありました。そこで「人生における損と得」という話題になり、友人はこのような話を始めました。

「人生には、結果的に損得が存在する。ただしこれは、打算や貸し借りによるものじゃなくて、人間の「徳」というものに通じるものだと思う。たとえば、自分が困っているときに助けてくれる人がいるとすれば、それは現世的な損得とは無関係に、良心によってなされるものだろう。無償で提供されるものが「人の情け」だからね。徳がある人は、普段から他者に精神的な施しをしているから、無意識のうちに周りに良心をもつ人が集まってくる。ところが世の中のことを損得勘定だけで判断している人は、それが不思議でならないし、嫉妬心を隠すことができない。徳のない人は、自分が損をしている理由を知るすべがないというわけだ」

友人は長年連れ添った伴侶を亡くされたばかりでした。「自分も徳を積んで人助けがしたい」。わたしは友人の言葉に感銘を受け、強くそう思いました。そこでたどり着いたのが行政書士という仕事でした。

④ブログ主の専門分野

わたしの専門分野は遺言や相続など、将来の困りごとに対するアドバイスと、独立起業や法人設立を予定している方への支援です。相反するようですが、わたしのなかでは理屈は成り立っています。いずれも「人助け」に通じる仕事だからです。サラリーマンとして多くの企業のビジネスの支援に関わってきた経験や、自らが相続において思いもよらない苦労をした経験を生かして、多くの方にアドバイスとエールを送らせていただきたいと考えています。

⑤難しい話はともかく

最後まで自己紹介を読んでいただき、ありがとうございます。少し固苦しくなってしまったかもしれませんが、何卒ご容赦のほどを。わたしは自分が関わっていくことで、困っている人や前向きなチャレンジャーに安心や笑顔が戻ってほしいという願いから、あらたな仕事とブログを始めました。「徳」なんていうカッコいい言葉を使いましたが、要するに、「感謝してもらいたい」という承認欲求だったりします。わたしは幼少の頃から褒められて伸びるタイプだったので。

このブログでは、行政書士としてのさまざまなアドバイスやお役立ち情報、趣味やプライベートに関することなど、いろいろと発信していく予定です。ご意見やご質問などがあれば遠慮なくご連絡ください。ホームページへのお問い合わせもお待ちしています。

 

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運転資金と設備資金に関する経営者の考え方について

「運転資金」は、仕入れ代金や家賃、人件費など、事業を運営する上で必要な資金のことです。融資といえば、すぐに仕入れや各種経費の支払いが思い浮かぶように、運転資金の借入は融資の中で最もポピュラーなものです。その一方で、企業が成長するなかで重要な課題に「設備資金」というものがあります。

これらの資金の重要性について、適切に把握している経営者が、あまり多くないという現状があります。

①資金不足の単純な原因

1.経営者の嘆き

中小企業のオーナーから時折聞かれるのが、「うちの会社は、利益は出ているのに資金繰りが厳しい」という言葉です。「儲かっているのに、お金が足りない」状況は、一見すると不思議なことのように思いますが、いくつの課題が関係しています。

2.儲かっていても赤字のように感じる

結果的に儲かっているにも関わらず赤字のように感じるのは、不思議な現象でもなんでもなく、一時的に、入ってくるお金よりも出ていく費用の方が多いというだけの話です。そして、一時的に手許資金が枯渇した場合には、支払いのための「つなぎ資金」が必要になります。

②月末にキャッシュが不足する理由

よく見られるのは、月末にキャッシュが不足するケースです。経営者が、「月末になるとうちは資金繰りが厳しくなる」と実感する原因は、月末になると入金と出金との間のタイムロスが可視化されるからです。

1.入金が在庫になっている

客がほしいと思うタイミングで商品がなければ、売り逃してしまいます。したがって、売れるか売れないか確証がなくても、ある程度多めに商品を持っておく必要があります。これが「在庫」です。

在庫というのは、買うときには即金、または売掛であれば1~2か月後に代金の支払いをしなければなりません。そして、その在庫はいつ売れるかわからず、現金化するまでに時間がかかります。このように、在庫を持つ商売では、お金が商品として固定されてしまうため、在庫の量や在庫の期間が多く(長く)なるほど、手許資金は少なくなります。

2.支払(買掛金や支払手形など)が入金よりも早い

売掛や買掛で商売をする場合は、通常、入金よりも支払いのタイミングが早いため、資金不足になりがちです。売掛の入金のタイミングが著しく遅い場合は、資金不足がさらに顕著となります。

3.売上が増えると運転資金が必要になる

基本的に、運転資金は支払いと回収の間に生ずるタイムロスを埋めるための必要資金ですが、それ以外にも資金不足が発生する場合があります。

それは、「予想以上に売上が増えたケース」です。通常の売上を予測して、同じような量の仕入れと販売をしていると、予想以上に注文が集中した場合には、急遽仕入れを増やす必要があります。このような運転資金を「増加運転資金」といいます。

注文に応えるために仕入額1000万円が1500万円に増えれば、資金が500万円分不足します。

4.融資の返済が多額である

会社が多額の融資を受けている場合、収支を圧迫します。ちなみに、借入金の元本は決算書に載らないので、帳面上は確認できません。たとえば、決算書の損益計算書に税引後利益が500万円と記載されていても、借入金の元本が600万円であれば、その会社は100万円のマイナスということになります。

③設備資金について

1.設備資金の特徴

金融機関から受ける融資には、「運転資金」のほかに「設備資金」があります。運転資金が、仕入れや家賃、社員の給与など、事業の経費に関する資金であるのに対して、設備資金は、什器や機械、建物といった、その企業が生産力を増大するために必要となる設備類を購入するための資金です。

2.設備資金は設備の生産性に着目する

設備資金の返済財源は、その設備による生産性の増加による利益です。ある企業は、設備資金によって、機械をAからBに切り替えるために投資しました。

・機械A    利益2000円の商品を月5000個つくることができる

・機械B    利益2000円の商品を月8000個つくることができる

・利益の増加 (8000‐5000)×2000=600万円

この設備投資によって、毎月600万円の増収が見込めるようになります。これが設備資金における返済原資となります。

3.設備資金の返済期間は法定償却期間内に収める

設備資金のための融資は、その設備が存在して稼働できることを前提に行われます。つまり、融資期間はその設備が使えるまでとなるのが原則です(法定償却期間)。

前項の例題の場合、機械Bの法定償却期間が5年であれば、3000万円(600×5)のあらたな利益を生む可能性があることになります。したがって、金融機関は3000万円以内の融資であれば認める可能性が高いでしょう。

④総融資額に対する返済期間は10年以内

設備資金の返済期間は、その設備の法定償却期間内とするのが基本ですが、運転資金と設備投資など、複数の借り入れがある場合、金融機関は融資総額の返済期間の上限を10年以内とするケースが多いようです。

1.キャッシュフローという考え方

金融機関が企業に融資をする際に、返済限度額(キャッシュフロー)という考え方を採用しています。

返済限度額(キャッシュフロー)=(税引き後利益)+(減価償却額)

2.返済期間の算出

返済限度額を元にして、返済期間を計算する方法を紹介します。

返済期間=(総借入額-運転資金)÷(キャッシュフロー

具体的にシミュレーションしてみましょう。

総借入額 5000万円

運転資金 2000万円

返済限度額 500万円

返済期間(5000-2000)÷500=6年

しかし、返済限度額が200万円しかない場合は、返済期間は15年(3000÷200)となり、金融機関の規定をオーバーしてしまいます。したがって、10年以内の適正額に収めるために借入額を少なくする必要があります。

3.設備資金を使う際の注意点

設備資金の融資を受けた際には、資金の利用方法に注意が必要です。経営者のなかには、設備資金の名目で融資を受けたにも関わらず、運転資金として使ってしまうケースがあります。なかには、業者からあえて高い見積もりをとり、設備金額として申請したうえで、実際には業者との打ち合わせで決めた安い金額を振り込むという悪質な事例も見受けられます。

金融機関からしてみれば、重大な契約違反であり、その場合には設備資金の返済だけでなく融資全額の返済を求められるケースもあります。経営者は充分注意しましょう。

 

税務署はなぜ相続があったことを知っているのか

あるご家庭のお話です。一家の大黒柱が亡くなって数か月経った頃、税務署からご長男の自宅に、「相続税の申告等についてのご案内」という郵便物が届きました。
「税務署はなぜ、父が亡くなったことや、わたしの自宅を知っているのだろうか?」
税務署に連絡したわけでもないのに、たしかに不思議ですよね。

①税務署は人が亡くなったことを知っている

1.市役所経由で税務署に連絡がいく
税務署は、人が亡くなったことを市役所経由で把握しています。遺族が市役所等に死亡届を提出すると、市役所は亡くなった方の相続人の情報や不動産の所有状況を税務署に知らせる決まりになっているからです。冒頭で紹介したご家庭の場合は、ご長男がお父様の死亡届を出されたのでしょう。

2.KSK(国税総合管理)システムとは
税務署は独自の情報網によって、個人資産の内容も把握しています。この仕組みをKSK(国税総合管理)システムといいます。
KSKシステムは、日本全国の税務署、国税局をネットワークで結び、過去に納税者から提出された確定申告や源泉徴収票のほか、株式の売却や配当金、保険金の支払調書などを集計して、納税者ごとに一元管理しています。

3.税務署から逃れることは不可能
普段意識することはありませんが、わたしたちの個人資産はKSKシステムによってガラス張りにされているわけです。そして、一定の資産を有するデータの方が亡くなると、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」が、故人の死亡届を提出した遺族宛に届くようになっています。

②税務調査の仕組み

税務調査とは、税務署が「納税者が税金を正しく申告したかどうか」をチェックするために行うものです。相続において、税務署がとくに注目するのは以下の項目です。

預貯金の流れ
不動産や株式、外貨などの金融資産の保有状況や履歴
生命保険(受取人の情報)

税務署は、故人の資産と相続税の申告内容との間にズレがないかをチェックします。そして、不審な点があれば税務調査に入ります。調査は、大きく2種類に分けられます。

1.任意調査
「任意調査」の場合は、税務署から事前に連絡があり、調査日時を決めて行われます。「任意」とはいえ、基本的に断ることはできません。強硬に断ると、後述する「強制捜査」に進んでしまう可能性があります。
調査は、被相続人(亡くなった人)が最後に住んでいた自宅で行われ、その場には、相続人のほか、税理士にも立ち会ってもらうことができます。税務署員からの質問に相続人が答え、場合によって、通帳や土地の権利証などの書類の確認を要求されることがあります。もっとも、無理やり家捜しされるというような、荒っぽい調査をされることはありません。

2.強制調査
「強制調査」は、任意調査を拒否した人や、明らかに悪質な脱税が疑われるケースに対して行われるものです。事前に連絡はなく、抜き打ちで自宅などに調査が入ります。
もっとも、よほど悪質でない限り、実態として強制調査が入るケースは非常に少なく、たいていは任意調査で解決しています。

③税務調査が行われる可能性

1.任意調査される確率は20%
税務調査は、贈与税所得税法人税などさまざまな税金の申告に対して行われますが、なかでも相続税は非常に調査数が多く、任意調査が入るのは申告総数の約20%です。
相続税は比較的高額になるため税務署の注目度が高く、相続は何度も経験するものではないので、申告漏れの間違いも起こりやすいからです。ちなみに、任意調査されたうちの80%は申告漏れを指摘されて追徴課税を支払っています。相続税の税務調査は特段珍しいものではなく、申告漏れをする人も多いという実態があるわけです。

2.調査時期は申告の翌年または2年後
税務調査が入る時期はだいたい決まっていて、申告の翌年または2年後の8〜11月といわれています。税務署の人事異動が毎年7月にあるため、その直後に調査を始めて、翌年の人事異動前までに1年かけて調査を進めていくからです。
申告から2年後の11月を過ぎても調査の連絡がなければ、税務調査が入る可能性はかなり低くなるといえますが、もちろん、これ以外の時期に調査される場合や、3年後以降に連絡がある場合もあります。

④税務調査が入りやすいパターン

ここでは、税務調査が多く入るパターンを確認していきましょう。

1.申告書に不備がある場合
当然のことですが、申告書に計算ミスや記載間違い、添付書類不足などの不備があれば調査の対象になります。

2.相続額が大きい場合
とくに、相続財産の総額が2億円を超えると、税務調査が入る確率はグンと上がるといわれています。資産家の相続はとくに注意が必要です。

3.相続財産に現金や預貯金が多い場合
相続財産のうち、不動産が多い場合よりも、預貯金が多い方が、税務調査が入りやすいとされています。
不動産は評価額の算定が複雑で、解釈の違いが焦点になりやすく、明確な申告漏れを指摘しにくい傾向があります。その点、現金や預貯金は予断が入り込む余地がないため、申告漏れを見つけやすいのです。
預貯金の出金が多いと、被相続人が生前に相続税対策として財産を移転していたという疑いをもたれます。また、返済されていない貸付金は、(債権=相続財産)とみなされ、未申告であれば追徴課税の対象になります。この2点は注意が必要です。

4.名義預金や暦年贈与が多い場合
被相続人の配偶者や子ども、孫などの資産に不審な点があると税務調査の対象になります。とくに注目されるのは、名義預金と暦年贈与です。
「名義預金」とは、被相続人が家族名義で開設した口座です。名義が違っていても、通帳や印鑑を被相続人が管理していたり、名義人自身が自由にお金を出し入れできない預金は、実質的に被相続人の財産であるとみなされます。学生や子どもなど、収入が少ない相続人の預貯金が不自然に多いと、名義預金あるいは「生前贈与」の疑いをもたれます。
ちなみに、生前贈与自体が脱税行為というわけではありません。毎年110万円までの生前贈与は非課税であり、この仕組みを利用して、少しずつ長期間にわたって生前贈与をするという節税方法があります。

 5.海外資
相続財産の中に海外資産が多いと税務調査されやすいです。
海外への送金や入金が1回あたり100万円を超えると、金融機関から税務署にその情報が送られます。そこで把握している資産額と申告内容に違いがあれば、税務調査が入ることになります。

6.被相続人が上場企業の社長、重役、医師、弁護士などである場合
亡くなった人が、上場会社の社長や重役、医師や弁護士など、高収入の職業の場合、税務署のチェックが厳しくなります。特に、相続財産が予想より少ない場合には申告漏れや資産隠しを疑われて調査が入るでしょう。

⑤税務署とトラブルにならないための工夫

最後に、相続人が心がけておきたい、相続税トラブルにならないための対策を提案します。

1.被相続人の財産を把握しておく
多くの場合、相続税の申告漏れが起きるのは、遺族が亡くなった人の財産を把握していないことが原因だといわれています。
配偶者も知らない銀行口座に多額の現金があった、知人とお金の貸し借りをしていた、家族が知らない不動産があり、家賃収入を本人が受け取っていたといったケースをときどき耳にします。ご本人にどんな資産があって、銀行口座はどこにあるかなど、財産全体を家族が把握しておくことによって、申告漏れを防ぐことができます。

2.生前贈与の証拠を残しておく
相続税対策として、生前贈与によって配偶者や子どもに財産を分け、相続財産をできるだけ少なくする方法があります。その場合、「生前贈与である」ことの証拠を必ず残すことが大切です。
たとえば、現金を手渡しして贈与すると、贈与の証拠が残りません。お金の受け渡しが贈与であることを証明できないと、税務署に不審に思われて調査されるリスクが高まります。贈与をする場合は、かならず金融機関に送金し、証拠を残するようにしてください。

3.かならず文書を残す
遺言書があれば確実な証拠になりますが、遺言書に残さずとも、相続に関するやりとりは口約束ではなく、文書にして残しておきましょう。法的根拠はなくとも、遺産分割の過程についての記録と実際の資産状況との間に整合性があれば、税務署から疑われるリスクを下げることができるはずです。

4.相続税の申告は税理士に依頼する
相続人が自分で相続税の申告をすることもできますが、税理士に依頼したほうが税務調査は入りにくくなります。税務のプロである税理士の申告であれば、ミスや申告漏れは少なく、脱税行為の可能性についても考えにくいはずです。実際に税務署もそのように認識しています。

 

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高齢者介護デイサービス事業の可能性について解説

日本には現在、特別養護老人ホームへの入所を希望しても満員で入れず自宅で待機している人が約40万人いるといわれています。
また、家族が介護する意志や能力がないために、治療する必要がないにも関わらず病院や老人保健施設を転々としている「社会的入院」の状態にある高齢者は約13万人いるともいわれています。
昨今社会問題化している老人介護ですが、逆にいうとビジネスのビッグチャンスであるともいえます。
そこで今回は高齢者介護ビジネスの基本と、新規参入にあたってもっとも障壁の低いデイサービス事業の始め方についても解説します。

①高齢者介護は成長産業である
日本の高齢化社会において、マーケットは拡大する一方です。
しかも、ただボリュームが大きいというだけでなく、要介護者たちが購買力を持っているということが、高齢者介護事業が注目すべきビジネスである理由です。
言葉は悪いですが「年寄りはカネになる」ということです。

②高齢者介護事業のために必要な資格

あらたに介護施設を開業する場合に必要とされる資格があります。
このなかには、事業を行うために必ず必要な資格と、あると便利な資格があります。
1.サービス提供責任者
介護事業を開業する際には、必ずサービス提供責任者がいなければなりません。
サービス提供責任者になるためには条件があります。
介護福祉士・看護師・准看護師保健師・実務者研修・ホームヘルパー1級・介護職員基礎研修の有資格者は届出をすればサービス提供責任者になれますが、介護職員初任者研修(旧・ホームへルパー2級)の場合は実務経験3年以上が条件です。
開業にあたっては、有資格者を1人だけ確保するだけでは不安です。
何かの事情でサービス提供責任者が退職してしまうと事業を続行できなくなるので、余裕をもってサービス提供責任者を複数名確保しておくことが重要です。
2.事業を発展させるために有利な資格者
開業後、事業を発展させるために、さまざまな有資格者を職場に取り入れることで幅広いサービスを提供することができます。
たとえば、社会福祉士精神保健福祉士がいると生活相談員として活動してもらうことができます。生活相談員とは、利用者やその家族、事業所などの連絡・調整役を担う仕事で、事業の潤滑剤としての役割が期待できます。
そのほか管理栄養士や調理師がいれば、調理職員として働いてもらうことによって利用者の健康面を食事から支えることができます。提供する料理の質の向上や食材の費用を節約できるメリットも期待できるでしょう。
看護師が施設内に常駐していると介護を必要とする人や家族は大きな安心感をもって利用することができるでしょう。理学療法士柔道整復師など身体の機能を把握している有資格者がいれば、介護者のリハビリを本格的に行うことができます。

③介護サービス事業で認められる法人形態の種類

介護サービスを始めるときに、法人形態を決める必要があります。
指定介護サービスで使用できる法人形態は、株式会社、合同会社合資会社・合名会社、NPO法人、医療法人、社会福祉法人、社団法人・財団法人、協同組合ですが、多くは株式会社かNPO法人かの選択になると思います。
株式会社を選択するケースが多いですが、地域密着型の介護サービスではNPO法人非営利団体も多く存在します。
NPO法人は開業費用も抑えられるので、小規模で介護サービスを提供していく上ではメリットが大きいです。介護サービスのイメージにも合っているので、株式会社に比べて社会的印象を良く見せることができます。ただし、NPO法人は利益を出すことを前提にしていない組織であることを最初に確認しておきましょう。
後々事業を大きくするために資金を集められる土台を築いておきたい場合は株式会社を選択した方が良いでしょう。

③介護事業開業のハードルが低いのはデイサービス
介護保険制度がスタートし、高齢者の在宅化を進める3本柱といわれているのが「訪問介護」「デイサービス」「ショートステイ」です。
このうち、ショートステイは設置基準を満たす施設の実現が容易でないことや、訪問介護は自宅に人を招き入れることが家族に抵抗感がある点がネックだという指摘がされています。
そこで、比較的参入障壁が低いデイサービスが注目されています。

④デイサービス成功のポイントは3つある

1.営業時間
できるだけ長時間利用できるデイサービスに人気が集まっています。この場合、スタッフのシフトを手厚くすることで長時間サービスを維持していきます。
2.料金設定
地域性や要介護度にもよりますが、デイサービスの基本料金(自己負担分)は1000~2000円程度であると考えられます。このほかに食費などがかかります。所得が限られる社会的弱者の方でも利用可能な設定にしておくことがポイントです。低所得者向けの軽減制度について、利用者が気軽に相談できる体制をとっておくことも重要です。

⑤デイサービス開業の秘訣
1.開業する地域
できれば土地勘のある場所で、人口、高齢化率、福祉施設の数、入所待機者の数などの統計数字を基に調査をすすめましょう。近隣の競合施設の状況チェックも重要です。
2.開業する拠点
デイサービスの拠点としてすすんでいるのが、古くなった戸建て住宅の活用です。
初期投資を抑えられることもありますが、好まれる一番の理由は、戸建て住居がこれまで高齢者が過ごしてきた生活環境に近いということです。戸建て住居は利用者にとってあたかも自分の生家やご近所の友達と一緒に暮らしているように感じて取ってもらえるでしょう。
3.融資や行政の補助の状況のチェック
開業にあたっては、融資を受ける場合が多いと思います。地元の金融機関の状況なども確認しておきます。
市場調査や事業の採算性、将来予測などを丹念に調査して事業計画書を作成しましょう。日本政策金融公庫や地域の金融機関から融資を受けるためには、しっかりした事業計画書が求められます。また、自治体の開業補助制度を有効に利用しましょう。
4.利用者募集
地域の居宅介護支援事業所のケアマネージャーや病院のソーシャルワーカー社会福祉士、介護支援専門員など)を直接訪問し、地域の広告ツールを利用しましょう。
5.スタッフ探し
開業のための最大の難関がスタッフ探しでしょう。
慌てて質の悪いスタッフを入れてしまうと、後々問題が発生することが多くあります。良質なスタッフをどれだけ集めることができるかが、ビジネスが成功するかどうかのポイントになります。
介護職の現状を見ると、給与水準やキャリアステップなどで課題があるのは事実です。その一方で、資格があるのに活動していない休眠人材が多くいるという現実があります。
収入面、労働条件面ともに労働条件をよくすることによって、ほかの施設で実働しているスタッフの転職や、休眠人材の発掘を考えましょう。
また、事業を長期的に継続するためにも、すでにキャリアがある人だけでなく、専門学校や福祉系大学へ積極的にアプローチしてみるといいと思います。

NPOや会社設立・起業を考えている方へ
NPOや会社を設立するうえで欠かせないのが「登記手続き」と「創業資金や運転資金の準備」です。
会社登記は会社設立をする際に必須の手続きです。
自分で手続きをすることもできますが、かなりの手間や時間がかかります。
また、融資を受けて創業をする場合には、金融機関に提出するためのさまざまな資料を準備しなければなりません。
また、さまざまな助成金補助金制度についても、個人で申請をおこなうのはなかなか骨が折れるものです。
こんなときには専門家に手続きを依頼しましょう。
登記手続きや創業融資、助成金補助金の申し込みに費やす時間や労力は、ぜひこれからのビジネスの本業をスタートするために使っていただきたいのです。

⑦創業融資を受けるためには専門家を利用しよう

日本政策金融公庫で創業融資を利用する際には、行政書士のサポートを受けることをオススメします。
創業融資を受けるためには、創業計画書や事業計画書などを作成し、創業するビジネスがどのように成功していくかについて根拠をもって説明する必要があります。
創業計画書や事業計画書をどれだけしっかりと作成し、きちんと説明できるかという点が非常に重要です。
もちろん、ご自身で創業計画書・事業計画書を作成し、日本政策金融公庫の面談を受けることも可能ですが、融資成功の確率をしっかりと高め、融資を実行させるためには、融資の専門家に依頼するのが一番です。

事実婚のパートナーに財産を残す方法

事実婚とは、法律上の婚姻届を提出しないまま、実質的な夫婦として生活をしている状態のことです。事実婚を選択している理由は、カップルごとにさまざまです。たとえば、同性カップルのように、法律上なんらかの障壁があるケースや、入籍自体にメリットを感じていないケースなど多種多様です。

事実婚のパートナーには相続の権利は一切ない

事実婚のパートナーは、相続人に該当しません。パートナーが亡くなったとしても、事実婚であれば原則として遺産は相続できないということです。

最近では、市区町村がパートナー証明などを発行しているケースや、遺族年金のように、事実婚であっても法律上の配偶者と同様に受給できる公的制度も存在しますが、法律上の籍を入れていない以上、長年同じ家で暮らし、生活を支え合ってきたとしても、「配偶者」には該当せず、したがって、相続人にもならないのです。

結論からいえば、事実婚のパートナーに「遺産」を残すことはできません。

事実婚のパートナーに財産を残す方法

しかし、遺産という形ではなく、「財産」を残す方法はいくつかあります。

1.生命保険に加入し、受取人にパートナーを指名する

自身を被保険者とする生命保険に加入し、受取人をパートナーにすることによって、保険金をパートナーに遺すことができます。 しかし、生命保険の受取人には一定の制限が設けてあることも多く、保険会社によっては、事実婚のパートナーを受取人にできないケースもあります。加入時にしっかり確認してください。

2.パートナーに「生前贈与」する

生前贈与は、贈与する相手との関係に制限はないので、パートナーに生前贈与することも認められます。ただし、年間の贈与額が110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要になります。注意してください。

3.パートナーに「遺贈」をする

遺言書を作成して遺言書を作成すれば、パートナーに財産を遺すことができます。これを「遺贈」といいます。しかし、戸籍上の配偶者や子どもがいる場合、遺留分が発生し、請求されれば、法定相続分の50%を渡さなければなりません。

4.パートナーを「特別縁故者」にする

被相続人が亡くなったあとにパートナーが「特別縁故者」であることを家庭裁判所で申し立てる方法もあります。以下の条件が満たされれば、遺産を受け取れる場合があります。ただし、特別縁故者として認められるケースは、非常に限られています。

事実婚のパートナーが特別縁故者になるケース

被相続人に法定相続人が1人もいない

被相続人の看病や介護をおこなった

被相続人と生計を同じくしていた

・その他、特別密接な関係にあった

③遺言する場合は公正証書が必要

事実婚のパートナーに遺言で財産を渡す場合には、次の点に注意しましょう。

1.相続ではなく遺贈になること

遺言の書き方は、「相続させる」ではなく「遺贈する」です。「相続させる」と記述すると、パートナーへの遺贈が無効になってしまうので注意しましょう。

2.遺留分に配慮する

事実婚のパートナーに財産を残す場合、現在、もし法律上の配偶者や子どもがいるのであれば、当然ながら、かれらの気持ちも尊重しなければなりません。

たとえ、事実婚パートナーに財産のすべてを遺贈する旨の遺言書を残したとしても、法律上の配偶者や子どもには遺留分が認められます。したがって、遺言書の作成においては、遺留分に配慮した内容によって、財産分与割合を決めるべきです。

無駄に相続トラブルの種を残す必要はないのです。

3.自筆証書ではなく公正証書

遺言書には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2通りがありますが、事実婚のパートナーに財産を渡す場合は、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言で作成しましょう。

公正証書遺言は、公証役場で公証人と2名の証人の立会いのもとで作成します。費用や手間がかかりますが、公証人のチェックも入るため、無効になる可能性がかなり低くなります。

もし遺言書が無効となってしまえば、事実婚のパートナーは、財産を一切受け取ることができなくなります。したがって、より確実である公正証書で作成しておくと安心です。

 

相続は「行政書士 服部祥明(はっとり・よしあき)事務所」にお任せください。

誠心誠意、ご依頼者様の立場に立って遺言書および遺産分割協議書を作成いたします。お問い合わせは以下まで。全国対応、秘密厳守いたします。

行政書士 服部祥明事務所

住所:名古屋市中区金山1-11-10 金山ハイホーム1002号

電話:052(228)3473

メール:yyy@office-yhattori.com

聖徳太子の犬の話

日本書紀によると、推古21年(613年)の冬、聖徳太子が片岡山を通りかかったところ、飢えて瀕死の状態の異人に出会いました。太子は、食物と自分の衣類を与え、翌日、使いをやって異人の様子を見に行かせると、すでに息絶えていたので、丁重に葬りました。

またしばらくして、墓の様子を見に行かせると、死骸は消えていて、衣服が畳まれて、棺のうえに置かれていました。里の住民は、あの異人は達磨禅師の生まれ変わりに違いないと噂し、聖徳太子は、自ら達磨像を刻み、祀りました。これが達磨寺のはじまりとされています。

聖徳太子の人物像

1.優秀な太子

聖徳太子といえば、豊聡耳伝説が有名です。一度に10人の人の話を聞いて理解し、的確な返答をしたというのですが、おそらくは、抜群に記憶力が優れていたということなのでしょう。

また、聖徳太子の別名である、厩戸皇子の名の意味は、馬小屋の前で生まれたという出生伝説のほか、馬は耳聡い動物とされていたことが、その由来ともいわれています。何にせよ、太子が非常に優秀な政治家だったことは確かでしょう。

2.武闘派の一面も

熱烈に仏教に帰依したことなどから、聖人のイメージが強い太子ですが、かつては、2度の新羅征伐を主導した武闘派であり、皇位継承の争いや、蘇我馬子との政争を繰り広げたこともあります。

それらのことから、さらに仏教へのめり込んでいったという側面もあったでしょうか。なんにしても、苦悩の多い人生だったと相続できます。

3.名前の由来

貴人のおくり名には、それぞれ理由があります。聖徳太子と同じ、「徳」の字をおくられた歴代天皇は、その言葉の意味に反して、みな不幸な運命をたどっています。

孝徳、称徳、文徳、崇徳、安徳、順徳の6人の天皇は、孤独死、投身自殺、流刑をうけるなど、悲惨な末路を遂げています。聖徳太子の死についても、疫病死や自殺、謀殺など、さまざまな説があるのです。

4.太子の死の秘密

聖徳太子の最期はわかっていません。日本書紀には、「厩戸皇子斑鳩の宮で亡くなり皆悲しんだ」という、いかにもあっさりとした記述があるだけです。死因がはっきり記されていないことについては、公表できない事情を想像してしまうのです。

聖徳太子の犬

聖徳太子は犬を飼っていました。おそらく白い犬だったのでしょう、名前を「雪丸」といいます。雪丸は言葉を話し、お経を唱えることができたと伝えられています。

雪丸の墓は、達磨寺にあります。雪丸が臨終の際、死ねば本堂の東北隅に葬ってほしいと遺言を残しました。雪丸は、政敵の多かった太子にとって、無聊の慰めになったのでしょう。聖徳太子は石工に雪丸の像をつくらせました。

聖徳太子は実在の人物か

聖徳太子は架空の人物だったという説があります。あるいは蘇我入鹿と同一人物だったともいわれていますが、わたしは実在の人物であると信じています。

政治の天才であり、愛犬家でもあった聖徳太子。昭和生まれのわたしにとって、かつての一万円札の肖像のイメージは脳裏に刻まれています。