無人販売所と防犯対策

無人販売所といえば、かつては田舎の畑の道端で野菜を売っているイメージがありましたが、現在は、コロナ禍における非接触ニーズに応える形で、餃子や高級牛肉、パンやスイーツ、ご当地グルメなど、さまざまな冷凍食品の無人販売所が増えています。

無人販売所のビジネスモデル

1.無人販売所が選ばれる理由

無人販売所の特色は「ローリスクローリターン」のビジネスモデルだということです。初期投資が少なく、人件費がほとんどかからないのでランニングコストも低く抑えることができます。

その分、利益幅は小さくなりますが、赤字にもなりにくい傾向があります。これらが不安定な経済環境下において、あらたなビジネスモデルとして、好感をもたれている理由でしょう。

2.無人販売所をはじめるために

たとえば、田舎の畑の前で野菜を無人販売するのであれば、特別な許可や届出は必要ありません。しかし、店舗を設けて、加工食品などを販売するためには、保健所の営業許可と食品衛生責任者の資格が必要です。

そのほか、飲食店の営業許可は店内での飲食提供に対する許可に限られるので、飲食店の厨房で調理したメニューをパッケージ化して販売する場合は、商品に応じた製造業、販売業の許可が必要になります。

たとえばラーメンであれば「めん類製造業」、「食肉製品製造業」、「調味料等製造業」など、冷凍餃子などの冷凍食品であれば「食品の冷凍又は冷蔵業」の営業許可が必要です。

②メリットとデメリット

1.無人販売所のメリット

無人販売所の最大のメリットは、コストの圧縮が可能なことです。接客や会計などの人件費は不要、24時間営業も可能なので、時間ごとの家賃も削減できます。

もうひとつのメリットは、事業転換が容易にできることです。たとえば、餃子を扱っていた店舗が、過当競争によって売上が下がってきたと感じた場合、「次はパンだ」とばかりに、すぐに扱い商品を替えることが可能です。

2.無人販売所のデメリット

これは、いうまでもなく、盗難です。実際に、無人販売所を狙った窃盗事件が相次いでいます。商品の持ち去りや、料金箱の破壊などが多発するのは、防犯カメラやセンサーなどの設備があっても、人間による監視がないことが原因です。人目がないので、どうしても犯罪のハードルは下がってしまいます。

また、24時間営業の店舗では、犯人は犯行時間を自由に選ぶことができます。とくに深夜や早朝が狙われ、警察の初動も遅れます。これも困った問題です。

犯罪以外の問題としては、店員がいないために、品質管理や衛生管理が怪しくなりがちという課題もあります。たとえば、来客が冷蔵庫の扉を開けたままにして立ち去り、食品の鮮度が落ちる可能性も考えられます。

③犯罪対策の今後

1.犯罪対策の限界

無人販売所のビジネスは、利益幅は小さくてもランニングコストが低いという特徴があります。店舗にとって、万引きや犯罪は、経営を圧迫する死活問題です。犯罪対策として、防犯保険に加入している店舗もありますが、薄利商売において高い保険料は利益を圧迫しかねません。

2.万引き犯人の映像公開に抑止効果はあるか

テレビのニュースなどで、防犯カメラにおさめられた万引きの生々しい映像を目にすることが増えました。独自にYouTubeで万引き現場の映像を公開している店舗もあります。これらの万引き現場の映像の公開が、多少なりとも「万引き対策」の抑止効果となりうるかもしれません。

もっとも、世の中には犯罪予備軍が一定数存在することは間違いなく、このことは、回転ずしチェーンでの迷惑動画の例が証明しています。無人店舗であることは、それだけで犯罪のハードルを下げる効果があります。したがって、残念ながら、今後も万引き等の犯罪行為は、無人販売所の経営を圧迫する要因であり続けることは避けられないでしょう。

無人販売所はまだ発展途上のビジネスです。今後はさらに競争が激化することが予想され、その中で、売上げ対策とともに、より効果的な犯罪対策に知恵を絞っていく必要がありそうです。