小さな飲食店を開業する方法

一人で小さな飲食店を開きたいと考えている人に向けて、開業前に行う準備について詳細を解説します。開業前の準備にはどのような手順を踏めばよいのか、事前に確認して開店準備の参考にしてください。

①小さい飲食店のサイズ感

1.小さい飲食店のカテゴリー

「小さい飲食店」の定義は人それぞれ異なりますが、一般的には面積は10~15坪ほどで席数20席以下の飲食店は小さい飲食店というカテゴリーに入ると思います。

小さい飲食店が多く並ぶエリアなどは、お客さんが入店するお店を選択する楽しみがあることから人気を集めています。

2.小さい飲食店のスタンダード

高級志向のレストランは(1坪に1席)用意するのが一般的です。一方で小さい飲食店ではカウンタータイプにするか、テーブルタイプにするかによって座席数は異なりますが、(1坪に2~2.5席)を配置するのが基本です。

バーやカフェ、ラーメン店、寿司屋など、業態にふさわしい席の配置や種類を選びましょう。小さい飲食店は、1~2人客をターゲットにした業態を選ぶのがスタンダードです。

②小さい飲食店のコンセプト設計

飲食店を成功させるために最も重要なのはコンセプト設計です。

1.コンセプト設計を甘く見てはダメ

コンセプトとは「どのような飲食店にするのか」ということです。来店するお客さんが感じ取る「店に対するイメージ」や「商品やサービスの内容」を判断する材料になります。

開業した後も方針がぶれることのないように、最初にコンセプトを決めましょう。

コンセプトが確立していないと、店の魅力や価値、強みをアピールすることができず、経営を安定させられないことにもつながります。

2.コンセプトが決まれば店づくりに迷いがなくなる

コンセプトを決める際には、店の名前や内装、立地、価格、営業時間、スタッフの人数など様々な要素も含めて検討します。店のコンセプトは店名や内装、従業員の接客態度や制服、メニュー名など、店のすべてにつながっていきます。

「コンセプトに共感できるような従業員を採用しよう」「食器やメニューのデザインはこうしよう」といった具体的な店づくりが検討しやすくなります。

3.コンセプトを確立するとリピーターが増える

「この飲食店は、このような商品やサービスを提供している」ということを来客が把握すれば、再来店するお客さんが増えます。

さらに、明確なコンセプトはお客さんへのメッセージとして伝わりやすいので、口コミの広がりにも期待がもてます。

③コンセプトづくりのノウハウは「5W1H」にある

飲食店を開業する際に融資を受けるケースもあるでしょう。その際に必要なのが「事業計画書」です。

計画書を作成する際にも、どのようなコンセプトのお店であるかを明確にしておく必要がありますが、「5W1H」を固めることは重要なポイントになります。

1.5W1Hを使ってコンセプトを決める

5W1H」はビジネス全般で使用されるワードです。「何を、誰に、どこで、いつ、なぜ、どのように」という5つの要素を明確にすることから始めます。

5つの要素が明確になると、設計がスムーズに行えるうえ、開業後も方針がぶれることがありません。

2.「5W1H」を使った検討例

何を:国産・無農薬栽培の食材を使う

誰に:健康志向の強い人、OL、カップ

どこで:10坪店舗でカウンター20席

いつ:ランチのみ

どのように:野菜はビュッフェスタイル、ポイントサービス

 

④何よりも重要なのは店舗物件選び

1.物件探しは資金調達より先に行う

店舗の物件選びは、資金調達よりも先に行います。

物件を探すよりも、資金調達を先に行わなければならないというイメージを持っている人が多いかもしれません。お金がなければ物件を借りられないというイメージがあるためです。

しかし実際には、資金調達よりも契約する物件を探して仮押さえをする方が先決です。

なぜ物件選びが先なのか

金融機関から資金を調達する際には事業計画書が必要です。事業計画書に出店場所や家賃が明記されていれば融資の可否判断がスムーズにいきます。

しかし、出店エリアや家賃など何もわからない状態では、金融機関は融資を判断できないのです。

したがって、資金調達よりも物件探しが先になるのです。自己資金が少ない場合には、手付金を払わずに仮押さえできるようにオーナーと交渉しましょう。

2.物件探しは施工業者に同行してもらう

物件を選ぶ際に施工業者に同行をお願いしましょう。プロの目で確認することによって、水回りの課題や予定していた席数を確保できないといった問題点を発見することができます。

内装工事の費用の概算がその場でわかるというメリットもあります。

3.「居抜き物件」について

飲食店の開業で人気がある「居抜き物件」について少し解説します。

居抜き物件とは、退去した店の造作などをそのまま使用できる物件のことです。機材などがそのまま使えるので初期投資が少なくて済むのがメリットです。

4.居抜き物件のデメリット

居抜き物件では、以前営業していた店舗が集客できずに閉店したケースが珍しくありません。近隣住民から良い印象を持たれていないとか、食中毒を出したというケースも考えられます。

このような場合は、新しく飲食店をオープンしても悪いイメージを払拭するまでに時間がかかる可能性が高いです。居抜き物件を検討する際には、不動産会社や近隣に以前の店舗の情報を問い合わせしましょう。

また居抜き物件では、厨房や客席の広さ、必要な器具に制限があり、自分が考えていた店のコンセプトと合致しないこともあります。理想通りの物件に出会えればラッキーですが、安易に妥協してしまうと後々まで後悔することもあり得ます。

5.開業予定日の8か月以上前に賃貸契約をする

外装工事、資金調達などを考えると、開業予定日の8~10か月前には契約を済ませておきましょう。契約すると家賃が発生します。したがって、この期間は自己資金から家賃を捻出しなければなりません。

⑤自己資金と資金調達の目安

小さい飲食店を開業する際にも意外とまとまった資金が必要です。自己資金のほかに金融機関から資金調達しなければならないケースがほとんどでしょう。

しかし、実際にどの程度の資金が必要なのか、自己資金はどれぐらい準備すればいいいのかわからないという人がほとんどだと思います。

1.費用の内訳

初期費用の内訳は、賃貸料、内装や設備工事費用、看板やメニューを作成する費用です。

賃貸契約の場合、月額家賃ほかに保証金(敷金)が必要です。保証金は家賃1年分というのが一般的です。月額家賃が10万円あれば、120万円用意しなければならないので結構痛いです。

内装と設備工事費用は、居抜き物件で坪単価(10~50万円)と、通常よりもかなり低く抑えることができます。

2.理想的な開業資金は1000万円前後

開業資金の平均値はおよそ1,000万円を考えておきましょう。小さい飲食店は60~80万円×坪数で計算するのが妥当です。

最低300万円程度の自己資金があれば開業そのものは可能だといえますが、残りは金融機関からの融資になります。

3.「居抜き物件」は初期投資で有利

居抜き物件であれば、初期投資はなりコストダウンできます。通常(一坪60~80万円)かかるところ、居抜き物件であれば(10~40万円)程度に用を抑えるとができます。

4.スタート時点で資金的に躓くケースが少なくない

飲食店を開業してすぐに千客万来となるケースは少ないかもしれません。開業してからの数か月間は黒字にならないケースがほとんどだといってもいいでしょう。

したがって、スタート資金がギリギリの状態でオープンすると、すぐに金銭的に煮詰まってしまうことになります。

5.助成金補助金を上手に活用しよう

開業資金を調達する場合に助成金補助金を利用する方法もあります。

補助金は、金融機関の融資とは異なり、一定の条件を満たして融資審査を通過すれば、前払いで融資が受けられます。

⑥成功のコツは「コンセプト・店舗選び・資金調達」

小さな飲食店を開業するためには様々な準備が必要ですが、準備を進めるための第一段階としてコンセプト設計を行うことが重要です。そのうえで店舗選びを行い、コンセプトに合ったロケーションを粘り強く探しましょう。

店舗選びで安易な妥協は禁物です。

資金調達については自己資金を合わせて1,000万円を目指して、あらゆる手段を講じましょう。資金調達のハードルは意外に高いですが、熱意があれば必ず成功します。