不登校の子どもと「ひろゆき」氏

日本国憲法が定める3つの義務といえば、教育、労働、納税ですね。このうち義務教育について、誤解している人もいるのですが、義務を課されているのは国家ではなく、保護者です。親が子どもに義務教育を受けさせなければならないということが憲法で定められているのです。
しかし、現実的にはさまざまな事情により、不登校になってしまう子どもが一定数存在します。2022年のデータによれば、不登校の児童・生徒は、小学校で1.0%(全国で約6万人)、中学校で4.1%(約13万人)いるそうです。パーセンテージは高くないとはいえ、実数としては無視できるものではありません。

この不登校問題については様々な意見があります。ネット空間では「義務教育を受けさせるのは親の責任」といった常識的な意見がある反面、「ムリやり学校に行かせる必要はない」「本人の自由意志を尊重すべき」といった擁護派の意見も目立ちます。

ひろゆき氏の主張には一理ある
昨今注目を集めている「2ちゃんねる」の創始者ひろゆき氏は、子どもの不登校に関して、「学校に行かないことによって、子どもがどれだけ損をするか」を説いたり、子どもを不登校にさせてしまう親のレベル(≒所得)の低さを嗤うなど、その主張はおもに損得論に基づくものが多です。

わたし個人としては、かれのロジックについて、かならずしも同意しないものの、親が子どもに教育を受けさせる義務を果たすべきという結論については、100%同意できます。

②勉強が必要である単純な理由

受験勉強は、かならずしも生活にとって必需ではありませんが、義務教育には社会生活を営むためのエッセンスが込められています。たとえば「九九」が言えない人が世の中には一定数存在するのですが、このことによって社会生活を営むうえで不自由を被ることは少なからずあると思います。

簡単な計算ができなければ、買い物も上手にできません。「そんなの、店が計算してくれるから大丈夫」。…本当にそうでしょうか。
差し障りがあるので実名は出しませんが、ある女性アイドルは算数がまったくできないので、コンビニで買い物をする際にも、いつも1万円札を出すのだそうです。そのため、いつも財布が小銭でパンパンになってしまうので、見かねたマネージャーがときどき両替してあげているそうです。

これだけなら可愛らしいエピソードのように思えるかもしれませんが、将来彼女が家庭をもって、家計を任されたらどうなるんでしょうか。

行政書士のささやかなこだわり
個人的な話で恐縮ですが、わたしは500円玉貯金をしています。たとえば722円の買い物をしたときには、レジに1222円を出すことがあります。こちらの意図を察して、レジの人がすっと500円玉をくれることもあるのですが、「722円ですけど…」と少し困った顔をされることもあります。こういう人は、たぶん(1222-722)の計算ができないのでしょう。やっぱり、算数ができないと困ることがありますよね。
そのほか、世の中には時計の針を読めない人も存在するのですが、これではさすがに、生活するのに困るんじゃないでしょうか。このような生活の基礎となる知識を教えてくれるのが義務教育というものなんです。

ひろゆき氏に愛情はあるか

以前、ネットを賑わしていた「不登校系ユーチューバー」について、ひろゆき氏の意見は辛辣です。「学校なんか行かなくても、子どもを教育することはできる」と主張し、不登校を是とするユーチューバーの父親に向かって、ひろゆき氏は「中卒の親は高校の勉強を教えることはできない。ましてや大学レベルの勉強を教えることは絶対不可能」と一刀両断にします。これは反論しようがない真実です。

「インターネットを通じて、不登校を是とするレベルの低い人たちの共感を集めることは『バカな親を増やすだけ』。害悪以外のなにものでもない」。これも正論だと思います。でも、わたしは少しモヤモヤします。なぜなら、かれの主張には愛情が存在しないからです。
温かみのない主張には、それが正しいとしても、共感を得ることは難しいのではないでしょうか。もっとも、ひろゆき氏は件の父親の共感を得ようとか、説得しようとする考えはなさそうですが…。

ただ、わたしの懸念は、不登校系ユーチューバーに対するひろゆき氏の厳しい指摘(正論)が、それこそレベルの低い同調者によって、不登校児童全体に対するバッシングに繋がらなければいいな、という点だったりします(すでになっているような気もしますが…)。